雫石・長栄館、営業を停止 鶯宿温泉街、募る不安

従業員に見送られ別れを惜しむ宿泊客=15日、雫石町鴬宿

 盛岡地裁から破産開始決定を受けた雫石町鴬宿の老舗旅館・長栄館(照井久美子社長)は15日、営業を停止し最後の宿泊客を見送った。常連は別れを惜しみ、鶯宿温泉の関係者は事業譲渡の先行きが見えない状況に不安を募らせる。

 県内外の約80人が宿泊し、家族連れや友人同士らが午前9時過ぎに宿を後にした。結婚記念日や還暦のお祝いにも利用した盛岡市山岸の深沢裕子さん(66)は「奥まった静かな宿が気に入っていた」と残念そうに話した。

 同市飯岡の橋場アヤ子さん(85)は2011年まで約20年、従業員として勤務した。「家族的で働きやすい職場だった。思い出深く、温泉街でも長栄館は大きな存在だ」と復活を切実に願う。

 長栄館は1952年に創業し、100%源泉かけ流しの温泉旅館として人気を集めた。破産管財人の管理下で営業を続けてきたが、事業譲渡を巡る交渉は難航。今後も譲渡先を探すとみられるが、競売など通常の破産手続きとなる可能性もある。

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