数々の記録を打ち立ててきたクレバーなドリブラー。藤野あおばは今、最も旬な選手だ【パリ五輪の選ばれし18人】

パリ五輪に挑むなでしこジャパンのメンバーがついに発表された。ここでは12年ぶりのメダル獲得を目ざす日本女子代表の選ばれし18人を紹介。今回はMF藤野あおばだ。

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ボールを受ける絶妙なポジショニングとスプリント、そして相手を抜き去る華麗なドリブルが武器の藤野あおばは今、WEリーグで最も旬な選手のひとりだ。

「小学校2年生の時に2011年の女子ワールドカップ・ドイツ大会があって、フィジカルが強い海外の選手に、なでしこジャパンが身体を張ってプレーするのを見て、大きな影響を受けた」と、夢に見たなでしこジャパンに定着し、今では攻撃の中核を成すまでになった。

藤野は日テレ・ベレーザ(現日テレ・東京ヴェルディベレーザ)の育成組織である日テレ・メニーナ・セリアスから、日テレ・メニーナに昇格できなかったものの、名門の十文字高校に進学すると、高校在学時に東京NBの特別指定選手となり、早くからWEリーグでプレーした。

2021-22シーズンのリーグ後期から東京NBの主力に定着し始め、翌シーズンには清水梨紗(ウェストハム・ユナイテッド/イングランド)、三浦成美(ノースカロライナ・カレッジ/アメリカ)など主力選手が退団するなか、藤野は得点ランキング3位タイとなる11ゴールを挙げて、東京NBを支える存在となっていった。

同年にはベストイレブンにも選出され、石川璃音(三菱重工浦和レッズレディース)と並んで19歳での受賞は、最も若い記録となった。

2022年8月には、池田太監督が指揮するU-20日本女子代表として、U-20女子ワールドカップ・コスタリカ2022を戦い、背番号10の藤野は全6試合に出場。得点は準々決勝のU-20フランス女子代表戦で決めたPKでの1ゴールに留まったが、チャンスメイクで日本の準優勝に貢献する。

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それから約1か月半後にはなでしこジャパンデビューを果たし、国際舞台でも徐々に評価を高めていった。

女子ワールドカップ・オーストラリア&ニュージーランド2023のメンバーにも選ばれると、なでしこジャパンの攻撃の重要なピースとなり、グループステージ第2戦のコスタリカ女子代表戦で決めたゴールは、相手選手の体勢を観察したドリブルと角度のない位置からの強烈なシュートで決めた。19歳と180日で決めたこの一発は、男女のワールドカップを通して日本選手最年少のゴール記録となった。

2023-24シーズンは東京NBのエースだった植木理子(ウェストハム・ユナイテッド/イングランド)が退団して、藤野の果たす役割はさらに増え、WEリーグではマークが厳しくなる一方。それでも冷静沈着なプレースタイルは崩さず、得点ランキング3位タイとなる9得点を決めて、2年連続のベストイレブンに選出された。

「ドリブルで対戦する相手の特徴を試合前に頭に入れて、弱点を掴んだなかでボールタッチする。最近は2人目以降の動きも意識しながらドリブルして、自分と相手の周辺の空間をしっかり認知できれば、相手を完全にドリブルで抜くべきなのか、抜かなくてもマークを外してパスやシュートを選択するのか、その判断ができる余裕が生まれてくる」

数々の記録を打ち立ててきたクレバーなドリブラーは、パリでも記録や記憶に残るプレーを披露するため、静かにその時を待つ。

取材・文●馬見新拓郎(フリーライター)

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