名産「龍飛岬マツカワ」養殖事業、若手にバトン 加工品製造でさらなる発展へ 青森・外ケ浜町三厩地区

「龍飛岬マツカワ」(手前)の養殖事業を引き継いだLaLaKiのメンバー。右から伊藤明菜さん、木下さん、佐々木さん、伊藤淳志さん
LaLaKiが製造する加工品。中央はマツカワガレイのしょうゆ麹漬、左は青森サーモンの塩麹漬、右はマツカワガレイのチャンジャ

 青森県外ケ浜町三厩地区名産の「龍飛岬マツカワ」(マツカワガレイ)養殖に、地元の若手グループが取り組み始めた。4月には、高齢化により後継者を探していた既存の担い手から事業を継承。魚肉を使った加工品製造を中核に据え、マツカワガレイから始まる地域振興に向けて奮闘を続ける。

 「地域の名産を育てる事業なので、今は身が引き締まる思い」と、町から運営委託を受け養殖事業を行っている竜飛崎の施設で話すのは、事業を継承した株式会社LaLaKiの伊藤明菜社長(40)。昨年9月からは継承に向け、同社のメンバーが交代で養殖場に通い、水温管理や餌やりなどを担当。4月には町から了承を得られ、正式に事業を受け継いだ。

 伊藤社長はもともと、家業の鮮魚店で商品配送をしてきた縁があり、2015年から同地区竜飛崎の「レストハウス竜飛 寿恵盛(すえもり)屋」の経営を引き継いだ。提供メニューのうに丼やマグロの唐揚げ、マツカワガレイの漬け丼などが地元の名産と本格的に関わり始めるきっかけ。21年には趣味を兼ねて生魚を使った「青森サーモンの塩麹(こうじ)漬」、「マツカワガレイのしょうゆ麹漬」を試作、お裾分けした知り合いからも好評で、地元食材を使った加工業へ進出する気持ちが芽生えたという。

 同時期には今別町で地域創生の取り組みを続ける地域商社・奥津軽社中の存在を、現在同社副社長で幼なじみの木下綾佳さん(36)から伝え聞き、はとこの伊藤淳志さん(42)、知人の佐々木雄二さん(39)と4人で地域おこしグループを結成。23年3月に会社化した。「マグロを食べる文化があるハワイで、人気の唐揚げを売ってみたい」との願いを込め、社名にハワイ語の「幸運な太陽」を意味する言葉を盛り込んだ。

 販売用加工品の試作を重ねていた21年3月、仕入れ先の生産者から、35年間養殖事業に取り組んできた伊藤文雄さん(76)が後継者を探しているという話が舞い込んだ。早速交渉したところ文雄さんが快諾。「事業は順調だったが、この先を見据え引き継いでくれる人が欲しかった。加工も手がける人たちなので将来は明るい」と文雄さんは目を細める。

 養殖した魚は現在、既存の出荷先に半量、残りは自社の加工品製造に使っているが、将来的には加工品向けの生産量を増やす構想だ。現在は2種類の麹漬と韓国風塩辛「チャンジャ」を1日計200本製造し、町役場主催のイベントや水産市などで販売。現在は新たにサーモンとマツカワガレイのトバ、冷凍のマグロ唐揚げも試作中という。大型連休中に青森市内で行われた町物産即売会でも売れ行きは好調で「試食してもらうと気に入ってくれることが多かった」と手応えを感じた様子だった。

 「三厩にはいい資源があるのに地元では使い切れず、担う人もいない現状を変えたい」と話す伊藤社長。事業に関わる人間を増やすことで、地域の人口増加にもつなげたいとし「今は行動するうちにさまざまなことがつながっている。今後もまだまだ新しいことが始まりそう」と期待感をにじませた。

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