夢の先の夢へ 二俣翔一(21) 育成から1軍スタメン 初ヒットに初ホームラン でも「印象深い打席は “フォアボール” 」広島カープ

レギュラーを目指してしのぎを削る若鯉たちによる熾烈なアピール合戦を繰り広げられる中、ことし、自身初の1軍でのスタメンをつかみ取った選手がいます。

二俣翔一、21歳。2020年のドラフト育成1位でキャッチャーとして広島カープに入団すると、内野手に転向した2年目。持ち前の打撃センスでオフに支配下登録を勝ち取ります。

3年目の去年はウエスタン・リーグ最多安打をマーク。優秀選手に選ばれますが、1軍デビューはかないませんでした。

二俣翔一(昨シーズン ウエスタン・リーグ)
打席405 安打94 本塁打5 打率.257

1軍定着を誓った今シーズンも開幕は2軍で迎えました。

広島カープ 二俣翔一 選手
「自分的にもやっぱりあせりの部分もあったんですけど、1軍に行ったら、そういうことは言っていられないので、なんとかしっかり自分のできることをやろうっていうふうに思っていました」

チャンスはすぐにやってきました。開幕3日後に1軍に呼ばれ、4月4日にデビュー。そして、4月19日の巨人戦で代打出場。

そこで、しぶとくプロ初ヒットをマークすると、翌週4月25日の神宮球場で初めてスタメンに名を連ねます。その第1打席、狙いどおりのカーブを仕留めた打球は、記念すべきプロ初ホームラン。与えられたチャンスにこれ以上ない、最高の結果で応えます。

二俣翔一 選手
「そのときは本当に初スタメンだったので、もう試合前からもう心臓が飛び出るぐらい緊張していたんですけど。次はホームラン打ちたいって気持ちもあったので、それがヒットの次の打席でホームランだったので、本当にめちゃくちゃうれしかったです」

夢にまで見た舞台で輝きを放つ二俣に印象深い打席を聞くと、初ホームランでもヒットでもありませんでした。

二俣翔一 選手
「フォアボール2つが本当にでかかったなっていうのは。これからの自分の役にも立つ、いい打席になったのかなと思っています」

“印象的なフォアボール” ―。それは、5月8日の阪神戦。同点で迎えた6回表に二俣は、驚異的な粘りを見せます。カープが苦手とする 大竹耕太郎 に12球を投げさせ、フォアボールを選びます。

さらに同点の8回。2番の二俣は、「続くクリーンナップになんとかつなげたい」との思いで再び粘り、フォアボールで勝ち越しのランナーとして出塁します。

そして、2塁へ進んだ二俣は、小園の当たりで一気にホームへ。フォアボールで出塁し、がむしゃらに走って飛び込んだ決勝点のホームイン。

二俣翔一 選手
「キャッチャーと接触して、こけちゃったんですけど、なんとかもう必死に走ってホームベースになんとか触りたいって思いで走っていたので、うれしかったです。なんとかすぐ起き上がってホームベースにタッチしないとっていう思いでタッチしました」

“二俣なら何か起こしてくれる” ―。試合に出るたびに成長する二俣の姿に、日増しに大きくなるファンとベンチの期待。5月22日の阪神戦では、1点ビハインドの9回、2アウト・ランナー3塁・1塁。一打サヨナラの場面を、新井監督は二俣に託します。

二俣翔一 選手
「球場がワーってなって自分が決めてやるっていう気持ちで打席に向かっていました」

“自分で決めたい” ―。しかし、ネクストの 松山竜平 を見て、意識は「つなぐ」ことへと切り替わりました。

二俣翔一 選手
「絶対、なんとかしてつないで、粘って、もうフォアボールでもいいから出ようっていう。自分がストライクゾーンをちょっと広げて、触れると思ったら振ってというふうにいたので、最後(11球目)のフォアボールもカウントを忘れるくらい集中していました」

実況 一柳信行 アナウンサー
「緩い変化球はボール。二俣がよくつないでいきました」

打ちたい気持ちを抑え、チームに貢献する若鯉の姿を新井監督も見逃しません。

二俣翔一 選手
「そうですね。きのうはナイスフォアボールっていうふうに言っていただきましたね。ああいう打席を増やしていきたいなって思っています」

二俣のもう1つの魅力は、内外野問わず守れて、ここぞの場面で球ぎわの強さを発揮する守備。そんなユーティリティプレイヤーが見つめる先は…

二俣翔一 選手
「いずれかは本当にどこかでレギュラーっていうのを目指しているんですけど、やっぱり今はこうやっていろんなところに出て、チームが勝つためになんとかしてがんばっているので、どのポジションでも全力プレーでやるっていうのは心がけてやっています」

◇ ◇ ◇

青山高治 キャスター
新井監督はよく「戦いながら強くなる」と。本当にそれを体現している選手ですね。

コメンテーター レイチェル・ニコルソン さん(翻訳者)
若いんですけど、ハングリー精神もありながら、かなり落ち着いている印象ですね。その場でいろいろ考えて、このプレーでつないでいくのか、ここは打ちたいのかっていうのもしっかり自分でわかっているので、こういう若い選手がこれからのカープを引っ張っていくのかなと思います。

青山高治 キャスター
育成から支配下登録になって、ここまで来ていますから。

中根夕希 キャスター
初スタメンで初ヒット。初ホームランもあるんですよ。なのに、印象的なプレーがフォアボールっていうのが、チームをすごく大切に思っている二俣選手の人柄がすごく表れていると思いましたし。まだ21歳なので、これからどんな成長を遂げていかれるのか、すごく楽しみになりました。

青山高治 キャスター
ニックネームは、“ふたまた” なので「マティ」っていいます。

レイチェル・ニコルソン さん
マティ、がんばってください。

青山高治 キャスター
ファンとしても次はどんな “初” を見せてくれるのか、そういう楽しみがあります。

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