走り負け、ミスを連発し...不甲斐ない神戸戦の完敗。“戦う決意”示せなかった川崎の悲しき姿

[J1第18節]神戸 1-0 川崎/6月16日/国立競技場

まさに完敗だった。

前節、17節の名古屋戦に勝利し、中断期間では改めてチームの根幹を成す技術面などを見直し、天皇杯の2回戦ではソニー仙台に勝利。ようやく上昇気流を掴みつつあり、昨季の王者である神戸との一戦は、今季初のリーグ戦での連勝、そしてシーズン後半戦へ勢いよく臨むための“大一番”と捉えているはずだった。

しかし、強度の高い神戸の組織的な戦い方の前に、縦パスを通せず、後方で回してロングボールを蹴って回収される悪循環。球際の勝負でも後手を取り、0-1以上の差を見せ付けられる結果となった。

エクスキューズはある。怪我人もいたことで4日前の天皇杯に主力陣を投入したこと、そして14時スタートだった神戸戦は、6月とは思えない30度に近い気温で行なわれたこと。そうした環境で思うように身体が動かなかった面もあるのかもしれない。

しかし、条件は神戸も同様で、なおかつホーム試合を国立競技場で開催した神戸は、移動も強いられていた。そういった背景を考えれば、やはり川崎のパフォーマンスはふがいなさすぎたと言えるだろう。

ただ走れば良いというわけではない。だが、スタッツを見ればチームトータルの走行距離では、神戸の108.7キロに対し、川崎は103.0キロで、チームトータルのスプリン回数は、神戸の116回に対し、91回。

ボールを奪われての帰陣も多く、佐々木旭も「戻る回数のほうが多かったと思います。それだと同じスプリントでも疲労感が全然違うので、自分たちがボールを握って、自分たちが攻めるゴールに向かって走る回数を増やさないと」と振り返る。

ポゼッション率では神戸の44パーセントに対し、56パーセントで上回ったものの、前述したとおりに後ろで回すシーンが多く、つなぎたい局面ではパスミスを連発。ボールを動かして相手を走らせるのが基本コンセプトだが、それが上手くいかないなら、がむしゃらにでも走り、ボールを引き出し、即時奪回へ相手へ寄せるなど、局面を打開しようとする動きが出ても良いものだが、最後まで丁寧にやることにこだわり、相手の得意なショートカウンターを浴びた印象だ。

【動画】川崎の失点シーン

「完全に相手のほうが質が良かったと思いますし、“戦っていた”と感じるので、サッカー以前の問題というか、なんだろう...そこの土俵というか、まずはそこに立てなかったというか、そこが勝敗の分かれ目だったと思います」(佐々木旭)

「こういう気候もありますが、やっぱり言い訳せずに向こうのほうが全体的に走っていましたし、僕らがやりたいことを相手にやられてしまった」(遠野大弥)

「もっとシンプルに攻撃をしても良かったのかなと。裏などスペースを使いながら、もっとシンプルにクロスを上げながら、最初はそういう試合の運びをしても良かったのかなと。丁寧に丁寧に、となりすぎて後ろに下げてしまったり、暑さもあってボールを奪われたくないという気持ちもあったなかで、後手後手になってしまったなと思います」(大南拓磨)

各選手が反省点を口にしたが、問題はより根深いとも感じる。

連覇を目指す神戸の酒井高徳は、試合後にこう強調していた。

「どっちに転ぶのか分からないのがサッカーだと思います。これが入れば、これが入らなければ、それをどれだけ突き詰めたチームが、結果を掴めるかが、サッカーの楽しさであり、キーポイントになってくる。そこの気持ちの部分、相手に負けない部分、今後は一瞬のスキが命取りというゲームが増えてくる。そこは集中力をチームとして持つ。

上位対決でどれだけ力を振り絞るかということが、後半戦の優勝争いの鍵になると思うので、大雑把かもしれないけど、気持ちの部分で負けないことが鍵になると思います。そういう意味でも今日のゲームは自信になるはずですし、チームとして良い部分を再確認できました。なんで勝てたかをフォーカスして、これが良かったではなくて、こういうことをしたから勝てたという面をチームとして共有し、次に生かす。積み重ねていきたいです」

翻って川崎は一本のパス、トラップにこだわり続け、ミスを許さない環境を築けていたのか。局面での勝負に絶対に負けない覚悟を抱けていたのか。相手に走り勝つ決意を持っていたのか。

魅せて勝つ、他には真似できないようなゴールを決める。レベルの高いサッカーを目指し続ける姿には好感が持てる。世代交代を進める今のチームに大きなポテンシャルも感じている。

だが、それは勝ち負けに徹したうえでの話だ。目の前の戦いに100パーセントで臨めなければ意味がない。

いや、真面目な選手が多いチームだ。一生懸命にやっていることは分かる。しかし、神戸戦からはなにがなんでも勝つというエネルギーを、まったく感じられなかったのが、悲しいのである。

4万9541人にという大観衆が集った国立でこれぞ川崎というサッカーを見せられる機会、前年・王者に真っ向勝負を挑める舞台。そんなまたとないチャンスをフイにしてしまったと言わざるを得ない。

本気で覇権奪回を目指しているのか。疑いたくなるような敗戦は、シーズン折り返しの時期と相まって、相当に厳しいものだと認識するべきなのだろう。リーグ戦での連勝を逃したのは何度目か。それでも、今度こそ、ここから這い上がるリバウンドメンタリティに期待したい。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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