忘れられない故人へ 1万2200通の思い、天国に届け 松江・黄泉比良坂で手紙おたき上げ

手紙を火にくべた後、手を合わせる来訪者=松江市東出雲町揖屋、黄泉比良坂

 忘れられない故人に送る「天国への手紙」のおたき上げが16日、松江市東出雲町揖屋の黄泉(よもつ)比良坂(ひらさか)であった。古事記で現世と死者の世界の境界と伝わる場所に県内外から約200人が集まり、1年間で集まった1万2200通を火にくべた。

 東出雲ライオンズクラブ(福田克己会長)が2017年から開き、今年で8回目。昨秋、NHKのドキュメンタリー番組で取り上げられたこともあり、手紙は例年の6倍以上の数が届き、おたき上げする場所を2カ所に増やした。

 催しで本人の了解を得て代読された手紙には、長年連れ添った夫に「結婚以来、2カ月も会えないのは初めてだね」と記され、寂しさや些細な日常への感謝がつづられていた。手紙は来訪者が少しずつ丁寧に炎に投げ入れ、白煙となって空高く上っていった。

 名古屋市の会社員(49)は「母と父に伝えられなかった『ありがとう』と『ごめんね』を手紙で少し伝えられた」と心境を語った。不慮の事故で亡くなった同僚を思い訪れたという、広島県三次市の会社員(64)は「ここは天国に近づける場所。心が落ち着いた気がする」と話した。

 手紙は通年で募集している。現地に設置されたポストに投かんするか、同クラブ宛てに送る。

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