機密費「汚職の温床」実感 野中氏から150万円受領の小川氏が証言 領収書不要 運用見直し進言

小川和久氏

 国が使途を公表していない内閣官房報償費(機密費)を受け取ったと公言している研究者がいる。軍事アナリストで静岡県立大特任教授の小川和久氏(78)=横浜市。小渕内閣で官房長官だった野中広務氏(2018年死去)の下で沖縄の米軍基地対策に当たっていた際に150万円を受領したが、領収書は不要で精算もなく「犯罪や汚職の温床になり得る」と実感したという。運用の見直しが必要としている。

 小川氏によると1999年7月に国の沖縄振興開発審議会の専門委員に就任し、当時の野中官房長官から米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題を解決するように特命を受けた。現地調査に出発する前の同月16日、野中氏の意向を受けた職員が東京都内にあった小川氏の仕事場へ封筒を届けに来た。中には新札の1万円札が100枚入っていた。

 小川氏が領収書や精算の処理方法を尋ねると、職員は「受け取りの文書はなく精算も必要ありません。自由にお使いいただけます」と答えた。小川氏は「機密費」と直感するとともに、ずさんな手続きに疑問を感じた。

 後日、野中氏に会った時に「精算だけは直ちに領収書付きで行う形にし、厳格に監査しなければならない。犯罪や汚職の温床になりかねない」と進言。30年後や50年後の情報開示を法律で定めることも提言した。野中氏はうなずいていたという。

 小川氏は沖縄に数日滞在して基地反対運動のリーダーたちと会うなどし、「100万円は航空運賃や宿泊費に充てた」と話す。その後も調査のため沖縄との往復を重ね、野中氏から追加で50万円を渡されたという。初回の余った分も含め「沖縄での調査の経費に使った」と説明している。

 また99年8月18日夕、野中氏が沖縄の県議数人を招いて都内の料亭で会食した場に同席した。基地問題の話を聞くのが目的だったが、各県議に用意されたお土産の手提げ袋に野中氏の秘書官が白い封筒を入れていくのを目撃。会合の後に野中氏に尋ねると、各封筒には50万円が入っていたという。小川氏は「情報を得るために機密費をまいている感じがあった」と振り返る。

 小川氏は20年に刊行した「フテンマ戦記」に一連の経緯を記している。

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