かつて久保建英と並び称された平川怜。紆余曲折を経て味スタでの古巣戦で1アシスト「いろんな想いがあった」【磐田】

2024年6月16日のFC東京戦、味の素スタジアムでジュビロ磐田のスターティングメンバーがひとりずつコールされると、あるタイミングでFC東京のスタンドから大きな拍手が沸き起こった。平川怜に対してである。

東京都調布市出身、FC東京のアカデミー育ちの平川は文字通りの生え抜きであり17歳215日でJ1リーグデビューを果たすなど、青赤軍団の未来を背負って立つ逸材と評されていた。しかし、プロになってからはFC東京で出番に恵まれず、鹿児島ユナイテッド、松本山雅へのレンタル移籍を経て、22年にロアッソ熊本へ完全移籍。退路を絶つ覚悟を決めた。

ここからJ2リーグで目覚ましい活躍を見せると、23年シーズンのJ2リーグベストイレブンを受賞。24年に磐田へ完全移籍し、J1の舞台に戻ってきたのだ。そして迎えた古巣との一戦、4-2-3-1システムの左サイドハーフを任された平川はコーナーキックから1アシストをマークし、チームの勝点獲得(結果は1-1)に寄与した。

そのアシストについて、平川は「狙い通りの形で、結果でチームに貢献できたのがポジティブ」と振り返った。古巣との対戦、しかもかつてのホーム、味の素スタジアムでの戦いだっただけに、「いろんな想いがあった」。

「このピッチでJリーグの試合を戦えたことは嬉しく思いますし、これからもっと上を目指して頑張りたいです」

試合前の拍手は聞こえなかったという平川も「最後に挨拶した時も(FC東京のファン・サポーターに)拍手で迎えてもらって、すごく良い気持ちになりました」。

紆余曲折を経てのFC東京戦、当然ながら特別な想いがあった。

「自分が育ったクラブには厳しさを教えてもらったチームでもあり、こうして対戦相手としてピッチに立てたことには何かしらの意味があると考えています」

かつては久保建英と並び称された平川が、苦しい時を乗り越えてJ1の舞台でも輝き始めている。ここからさらにプレーのクオリティを高めて、いずれはJ1リーグの主役になってほしい。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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