【6月17日付編集日記】おまわりさんの日

 もう何十年も前の話だが、事件の特定を避けるため、ぼんやりした書きぶりになることをご容赦いただきたい。ある事件の取材で凶器の入手先がどうしても分からなかった

 ▼親しくしていた捜査員も、いつにも増して口が堅い。警察からネタが取れなければ、周辺取材しかない。関係者に話を聞いて回ると、どうやら凶器は犯人の子どもの持ち物だったことが分かってきた

 ▼捜査幹部にその情報を確認してみると「ばれた」とぽつり。子どもには自分の物が使われたのを知られたくない―と、犯人は何度も捜査員に頼んだらしい。自分が書かなければ、凶器の本来の持ち主は資料に残るだけで、まず公にはならない。捜査員らの温かさに触れた気がした

 ▼鹿児島県警の元幹部が内部文書を漏らしたとして逮捕された事件は、いまだ謎の部分が多い。元幹部は警察官の不祥事について、本部長に事件隠蔽(いんぺい)を示唆されたため情報を外部に出したと主張し、本部長はそれを否定している

 ▼真相がどうであるにせよ、彼らの守りたかったのが、警察組織とそれに属する自分自身だったように見えるのが悲しい。守るべきものは庁舎の中ではなく、外にこそあっただろうに。きょうはおまわりさんの日。

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