【6月12日付編集日記】共感

 デジタルカメラやスマートフォンに記録した写真は、保存するのに場所は取らないし、劣化することもない。唯一、難点はあっという間にたまってしまうこと。時々、整理しないと、撮った記憶もろとも、どこか遠くに埋もれてしまう

 ▼フィルムカメラで撮影した昔の写真をデジタル化している、きちょうめんな知人がいる。たまに、彼が懐かしい写真を引っ張り出して交流サイトにアップすると仲間内で話は弾み、懐かしい記憶がよみがえる。記録は、共有されることで共感につながる

 ▼ユダヤ人の少女アンネ・フランクが日記を書き始めたのは、13歳の誕生日を迎えた1942年6月12日。ナチスに荒らされた隠れ家に散らばっていたのが見つかり世に出ることになった

 ▼豊かな感受性と洞察力でつづったみずみずしい文章は、世界中で読み継がれている。不安や恐怖の日々を送る中でも「いまなお希望を―何事につけても希望を忘れていないのです」と記した彼女の心根は共感を呼ぶ

 ▼彼女はジャーナリストか作家になる夢を抱いていた。日記には、周囲のみんなの役に立つ、みんなに喜びを与える存在でありたい―と記している。記録し続けることの重みをかみしめ日記を読み返す。

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