「右も左も言葉も分からない少年」からなぜ蘭リーグ屈指の右SBに? 菅原由勢が実感した対応の変化「試合前後で別人かのように…」

オランダ1部AZに所属する菅原由勢が6月16日、地元の愛知県でサッカークリニックを開き、およそ100人の小学生と交流した。

クリニック後、「ゆかりのある地で子どもたちと一緒にボールを使って楽しめました。まさか自分がサッカー教室をする側になるとは思っていなかったので、素晴らしい機会をいただいて本当に感謝です」と笑みを浮かべた23歳の日本代表DFは、今夏の移籍が有力視されるなかAZでの5年間も総括。10代で加入したクラブに強い愛情を持っているようだ。

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「右も左も言葉も分からない少年がオランダに行って...その時は野心しかなかったし、絶対ヨーロッパで成功を収める、ヨーロッパのトップレベルになる決心をしていましたけど、AZはもちろん良いクラブなので、傍から見たら難しいって思われていたし、そう感じる部分もありました。

でもなんとか自分を奮い立たせて、絶対この地で成功する覚悟を決めて、言葉が分からないなりにコミュニケーションを取ろうとしたし、もちろん相手との勝負で負けないようにと無意識にやっていたのが、今考えたら分かるというか。無理して考えて『こうしなきゃ、こうしなきゃ』ってよりも、臨機応変にやれていたのが今に繋がっていると思います。

ただの少年がA代表まで行けるレベルまで連れていってくれたのはAZだし、チームメイトだし、クラブの関係者の皆さん。そこに関しては感謝しかないので、この先については、しっかりクラブと話し合いたいです」

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海外挑戦1年目から出場を重ね、今やオランダリーグを代表する右SBとなった。飛躍の契機はリーグデビュー戦にあるという。「ターニングポイントって言ったらなんですけど、良かったなと思うのは、最初の年のリーグ開幕戦」と切り出し、こう振り返った。

「スタメンで使ってもらって、たまたま点を決められたし、パフォーマンスもすごい良くて。その時は活躍することしか頭になかったけど、よくよく考えたらある程度テストされていたんだなと。チームメイトやコーチ陣の対応の変わりようというか、元々悪いわけじゃないんですけど、もっと助けようと、チームの一員として馴染ませてくれるようになったのを実感しました。本当に試合前後で別人かのように扱ってくれたので。

目に見えない壁、試練は多分感じてないだけで、その都度あったんですけど、常に全力でぶつかってきたし、自分が持てる全てを毎日練習で出してきた結果が今に繋がっていると思います」

自身の武器はずばり、攻撃力だと説明。「サイドバックですけど、攻撃的に絡んでいって、攻撃を作る部分は、自分自身の存在価値。AZの監督もそうだし、色んな人から『お前が攻撃を作らないでどうするんだ』って話もされる」と語る菅原は、続けてピッチ外での貢献にも言及した。

「練習での姿勢やジムでの行ないもそう。常に自分に必要なものをやってきたなかで、ジムにいる時間や練習への姿勢をすごく評価してもらえました。23歳、22歳の段階から、模範という形で扱ってくれるようになったというか。練習前後の身体のケアも含めて、こうした方が良いモデルのその先に自分を置いてくれていたのがAZなので。

意識せず、勝手に自然な流れでそうなっていったのは、自分がAZで残してきた結果がそうさせたのかなと。『チームを引っ張ってほしい』『ピッチ内外で模範になってほしい』と言われるとは思っていませんでした。そう言われるのはやっぱり、自分がやってきたことがそういう形にさせたんだなと、今考えたら思いますね」

模範としてもオランダで眩い輝きを放つ愛知のスターは、今夏にステップアップを果たすのか。インテル、ラツィオ、アタランタなどセリエAの名門や、プレミアリーグからの関心が盛んに報じられている。

取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)

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