春のテニス早慶戦開催。男子は最終エース対決にもつれる激戦を新監督率いる慶大が制す!<SMASH>

伝統の「早慶対抗庭球試合」(早慶戦)が、6月15日、16日に慶應義塾大学日吉蝮谷テニスコート(横浜市)で行なわれた。テニスの早慶戦は春と秋の年2回開催され、今回で男子第197回・女子第111回を迎える。インカレや大学王座など全国につながる大会ではないが、両大学の部員や関係者にとっては何よりも重要な“負けられない戦い”が早慶戦だ。

男子はダブルス3本、シングルス6本の計9試合制で、春は5セットマッチで行なわれるとあって、とりわけ熱く燃え上がる。近年は早稲田大学が長く連勝してきたが、昨年は春秋と慶大が連勝しており、大学王座決定試合でも慶大が頂点に立つなど、情勢は変わってきている。それでも蓋を開けてみなければわからないのが早慶戦。試合は希に見る接戦となった。

先に流れをつかんだのは不利が予想された早大だ。初日のダブルスで、D1の山口柚希/森田皐介とD3の藤田大地/前田優が共にフルセットの接戦をモノにする。どちらもセットカウント1-2と追い込まれてから粘りの逆転勝ちだった。

翌日のシングルスに入ると、慶大が追いついては早大が突き放す白熱した展開に。慶大S4の菅谷優作、早大S6のルーキー遊川大和、慶大S5の脇坂留衣が勝利し、3勝3敗で残り3試合が3面並んでほぼ同時に始まった。2つ取った方が勝ちである。

今年から慶大を率いることになった原荘太郎新監督は、この3試合のうち2試合が、S1下村亮太朗とS2高木翼だったことがカギだったと振り返る。「彼らは4年生で、大学王座の修羅場を経験してきている。去年決勝で高木は勝ち切っているし、下村はものすごく悔しい負けを喫していたので、勝負がかかった時の緊張感に強かったのかなと思います」

早大はS3栗山晃太朗が先勝し4勝3敗と王手をかけたものの、慶大は高木が勝ってタイに追いつき、最後はエース対決で下村が山口に快勝して、慶大が計5勝4敗で早大を下した。
初陣を飾った原監督は「去年日本一になったことで、接戦での勝ち方とか本当の修羅場での考え方などが、チームに“血”として流れてきたように感じます。まだまだ成長しないといけませんが」と今年のチームを評価する。幾度も早大に跳ね返されてきた慶大だが、その苦い経験が今実を結んでいるということだろう。

一方敗れた早大の石井弥起監督は勝利を逃した差について「色んな要素があると思うが、1つはやはり期待していた選手たちのケガがあって、準備不足は否めなかった」と明かす。鍛えたいが鍛え切れなかった状況を踏まえ、「ケガしないフィジカル作りが今後の課題です」と肝に銘じていた。

これで早慶戦の通算成績は慶大から見て87勝110敗。勝者のメンタルを備えつつある慶大に対し、早大も4-5と食い下がり、昨年関東リーグ2部との入替戦にかかったどん底の状態からは立て直してきている。秋の対戦では両校がどんな戦いを見せてくれるのか、楽しみにしたい。

◆男子結果
○慶應義塾大学[5-4]早稲田大学×
D1:×下村亮太朗/高木翼[7-6(2) 4-6 6-3 3-6 2-6]山口柚希/森田皐介○
D2:○脇坂留衣/眞田将吾[3-6 6-3 6-2 7-5]栗山晃太朗/本山知苑×
D3:×菅谷優作/石島丈慈[4-6 6-3 6-4 2-6 3-6]藤田大地/前田優○
S1:○下村亮太朗[7-6(5) 6-1 6-4]山口柚希×
S2:○高木翼[7-6(10) 6-1 6-4]木原啓汰×
S3:×眞田将吾[3-6 6-7(4) 3-6]栗山晃太朗○
S4:○菅谷優作[6-2 6-3 6-0]森田皐介×
S5:○脇坂留衣[6-4 6-3 6-4]鈴木蒼平×
S6:×安藤凱[2-6 0-6 0-6]遊川大和○

取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)

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