九州の“ロマン系”右腕、チェンジアップが武器の実戦型投手が注目度上昇!【全日本大学選手権で評価を上げたドラフト候補5人】<SLUGGER>

青山学院大の史上6校目となる大会2連覇で幕を閉じた全日本大学野球選手権。4年生のドラフト候補にとっては非常に重要な大会となるが、その中でも今大会で評価を上げたと思われる選手を5人、ピックアップして紹介したいと思う。

▼広池康志郎
(東海大九州キャンパス│投手│都城農高)
【今大会の成績】1試合 5.0回 被安打7 自責点2 4奪三振 0四死球
【現時点での評価】支配下指名の可能性あり

九州の大学球界で密かに注目されていた大型右腕。大学入学後もまだ身長(骨)が伸びていたこともあって高い負荷のトレーニングが行えず、この春も体調不良で出遅れてわずか1試合の登板に終わっている。しかし、本大会では先発を任せられると、負け投手にはなったものの、5回を投げて2失点と試合を作った。

長いリーチを生かした豪快な腕の振りが特長で、ストレートの最速は151キロをマーク。テイクバックで体が後傾し、少し無駄な動きも目立つものの、指にかかった時のボールの勢いは申し分ない。典型的な未完の大器というタイプで育成に時間はかかりそうだが、スケールの大きさは魅力だ。1回戦の登板には多くのスカウト幹部が球場を移動して視察に訪れていた。▼藤井優矢
(東日本国際大│投手│角館高)
【今大会の成績】4試合 23回 被安打15 自責点2 17奪三振 6四死球
【現時点での評価】支配下指名の可能性あり

春のリーグ戦では5勝0敗、防御率0.72という圧巻の成績でMVP、最多勝、最優秀投手、ベストナインを受賞。本大会ではリリーフに回り、全4試合に登板するフル回転の活躍でチームを準決勝進出に導いて最優秀投手賞を受賞した。投手としてはそれほど体が大きいわけではないが、姿勢が良く、しっかりと体重を軸足に乗せてからスムーズに体重移動でき、シャープな腕の振りが持ち味。特にシュートしながら沈む130キロ台の速いチェンジアップはストレートと軌道が変わらず、打者の手元で鋭く変化する必殺のボールだ。

ストレートのスピードは140キロ台中盤と驚くような速さはないものの、勝負所でギアを上げられるのが長所。制球力も高く、スタミナも申し分ないだけに、もう少しアベレージの出力が上がってくればプロ入りも見えてくるだろう。

▼印出太一(早稲田大│捕手│中京大中京高)
【今大会の成績】16打数4安打3四球 打率.250
【現時点での評価】支配下指名の可能性あり

中京大中京では高橋宏斗(現・中日)とバッテリーを組んでいた大型捕手。大学では好不調の波が大きかったが、この春は攻守に安定したプレーで2度目のベストナインを受賞した。本大会で特に目立ったのが守備での貢献だ。スローイングは昨年までと比べて明らかに素早さも正確性もレベルアップしており、度々盗塁阻止や牽制で走者を刺してピンチを救った。 また、タイプの異なる投手の持ち味を引き出したリード面にも光るものがある。バッティングも打点こそなかったものの、4試合全てでヒットを放ち、3個の四球を選んでチームの準優勝に大きく貢献した。攻守ともにプロで勝負するためにはもうワンランクレベルアップしたいところだが、大型で大舞台での経験が豊富なのも魅力だ。大学日本代表候補合宿にも召集されており、そちらでのアピールにも期待がかかる。

▼佐々木泰
(青山学院大│三塁手│県岐阜商高)
【今大会の成績】15打数5安打2本塁打8打点1四球 打率.333
【現時点での評価】上位指名の可能性あり

今年春のリーグ戦では打率.178と不振に陥ったものの、本大会では見事な復調を見せて強烈にアピール。チームを大会連覇に導き、最高殊勲選手賞に輝いた。特に圧巻だったのが準決勝の天理大戦だ。第1打席で先制の3ランを放つと、その後も勢いは止まらず4安打、6打点をマークしてみせたのだ。

今大会で放った2本のホームランはいずれも低めのボール球をすくい上げてレフトスタンドまで運んだものであり、体勢を崩されても遠くへ飛ばせる長打力は大学球界でも屈指だ。一方で中京大戦、早稲田大戦では外の速いボールに対応できなかったように、まだまだ穴が大きい印象は強い。秋にどこまで対応力を上げられるかがポイントとなりそうだ。▼浦田俊輔
(九州産業大│遊撃手│長崎海星高)
【今大会の成績】5打数3安打1盗塁 打率.600
現時点での評価:上位指名の可能性あり

2回戦以降はふくらはぎを痛めて代打で1打席のみの出場に終わったが、それでも1回戦で強烈な印象を残して評価を上げた。特に昨年から比べて成長を見せたのがバッティングだ。140キロ台後半のストレートにも力負けせずにセンター前に弾き返し、続く2打席では変化球にしっかり対応して3安打をマーク。追い込まれてからも当てにいくことなく、鋭くしっかり振り切れ、ヘッドスピードも打球の速さも申し分ない。

元々の持ち味である守備と走塁でもさすがというプレーを連発した。怪我の影響で大学日本代表候補合宿を辞退したのは残念だが、秋のプレー次第では上位での指名も見えてくるだろう。

その他、大会前に再注目と見られていた西川史礁(青山学院大│外野手│龍谷大平安高)と渡部聖弥(大阪商業大│外野手│広陵高)の2人は目立った成績は残せなかったが、それでも随所にポテンシャルの高さは見せた。6月22日からは大学日本代表候補合宿もスタートするだけに、そこでのプレーぶりにもぜひ注目してもらいたい。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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