“カナリア軍団”が見事に全国に復帰 21大会ぶり4度目の頂点目指す

帝京イレブン(写真=佐藤亮太)

 インターハイの優勝が3度に準優勝5度の名門・帝京が、東京予選を2大会ぶりに制し、全国の舞台に戻ってくる。OBの日比威監督が昨秋退任し、同じく卒業生の藤倉寛新監督が就任してまだ半年余りだが、“カナリア軍団”は見事に激戦区の東京を勝ち上がった。

 高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ2024 関東1部所属の帝京は、スーパーシードとして2次トーナメント準々決勝から登場。昨年度の第102回全国高校サッカー選手権に東京A代表として初出場した早稲田実業と対戦し、2-1で接戦をものにした。

【フォトギャラリー】帝京 vs 駒澤大学高等学校

 主将でボランチの砂押大翔(3年)が先制点を挙げ、1-1の後半35分に2年生FW宮本周征が決勝ゴールを奪って逃げ切った。

帝京イレブン(写真=矢島公彦)

 1年前の予選は準々決勝で、準優勝した成立学園に0-2の完敗。2年連続出場を逃していただけに、今大会に懸けるイレブンのモチベーションは高かった。「帝京が全国大会にいないのは寂しいですからね」とは、守備ラインをまとめるCB田所莉旺(3年)の言葉だ。

【フォトギャラリー】帝京 vs 早稲田実業

 プリンスリーグ参戦により、関東高校大会予選には出場していない。新チームにとって、公式大会でのトーナメント戦は今回が初。一発勝負は何が起こるか分からず、どんな強豪にも不安は付いて回るものだ。実際、1年前の予選では初戦の準々決勝で敗退している。

 砂押は「試合への入り方やいい緊張感は大事だし、負けたら終わりという意識を持ってやらないといけません」と、その難しさを口にする。

 代表枠が2校の東京は、決勝に駆け上がればインターハイの出場権が手に入る。その準決勝の相手は、令和6年度関東高校サッカー大会東京予選で準優勝した日大豊山だった。

 帝京は守備ラインでゆったりと回しながら次への展開をうかがっていたが、効果的なチェンジサイドや壁パスなど敵の守備を切り裂く工夫がやや足りず、スピードアップする時機も逸していた印象だ。

 「ボールを持てる時間もありましたが、全員が広い視野で(状況を)見られたら、もう少しスムーズにできたのかもしれません。天然芝のピッチにも慣れていなかった」と砂押は振り返る。

 前半18分に逆襲・速攻から失点したが、追加タイムにFW土屋裕豊(3年)がFKを直接ねじ込んで追い付き、延長戦突入と思われた後半のアディショナルタイムに後半開始から投入されたMF杉岡侑樹(2年)が、相手陣営のゴールライン手前で敵ボールを奪取。角度のない右からニアサイドに決勝点を蹴り込んだ。

 先制されても粘り強く忠実な守りで追加点を許さず、いずれも終了間際の2得点とは何とも勝負強い。

 昨年2月に川崎フロンターレU-18から帝京に転籍した田所は、「今年(の守備ライン)は去年より個が強くないので、4人でコートの横幅をしっかり見ることを意識しています。個人的には毎日の練習で土屋と1対1の勝負を欠かさないので、相手の攻撃陣は怖くはありません」と186センチの長身CBはきっぱり言い切った。

 田所と土屋は抜くか止めるかのマッチアップ勝負を日課とし、勝敗を競っているそうだ。「今日は勝った、今日は負けたって感じで競い合っています。クロスの練習でも土屋と勝負しているので、本番では自信になります」と説明。切磋琢磨の努力が実を結んだようだ。

 鹿島アントラーズのノルテジュニアユース出身の土屋も、「いい練習になっています。互いに成長していると思うけど、負けると悔しいですね」と笑い、「2年前は2位だったので今年こそ全国優勝したい」とチームの思いを代弁した。

 決勝ゴールを奪った杉岡もヴァンフォーレ甲府U-15に所属していたが、土屋と同じくユースには昇格できなかった。そこで声を掛けてもらった帝京で勝負することにした。

 プリンスリーグは無得点で、この日の値千金弾が公式戦初ゴールとなった。「去年は(1年生大会の関東)ルーキーリーグなどを経験したことで、自信を持ってプレーできるようになりました。自分はターンやドリブルは上手なほうだと思うので、これでチームに貢献したい」と切り札は気持ち良さそうに話す。

 ワールドカップ日韓大会が開催された2002年以来、21大会ぶり4度目の頂点へ、カナリア色のユニホームの躍動が楽しみだ。

(文=河野正)

      

© サッカードットコム株式会社