ソフトバンク、交流戦Vは逃すもパ・リーグ一人旅 光った小久保監督の危機管理能力 柳田悠岐離脱、山川穂高の不調でも次々に〝代役〟が活躍

プロ初本塁打の広瀬とタッチを交わす小久保監督

ソフトバンクは交流戦を12勝6敗の貯金6で戦い終えた。優勝した楽天には1ゲーム差及ばず、9度目の頂点こそ逃したが、〝2勝1敗ペース〟で貯金を増やした。パ・リーグ2位の日本ハムとの差は交流戦前の4・5ゲーム差から8・5ゲーム差に拡大。小久保裕紀監督は「優勝の可能性まで来たのが想定外だった。最低(勝率)5割でやってきたのでこれで一区切り」と十分な手応えをつかんでいた。

得意の交流戦とはいえ、小久保監督の言葉通りに決して楽観できるものではなかった。交流戦直前にはロッテに敵地で同一カード3連敗。3試合で2点しか取れなかった。パ・リーグ同士の対戦が一区切りし、「(交流戦に入れば)雰囲気が変わるし、全く別物の野球になる。切り替えるというほどではないが、勝手に雰囲気が変わるから。それをよしとしましょう」と努めて前を向いていた。

交流戦、最初のカードは巨人3連戦(東京ドーム)。初戦を取り、連敗は止めたが、2、3戦目を落とし、カード負け越しでスタートした。特に3戦目は5点を先行しながら大逆転負け。また守備時に三森大貴が右手人さし指を骨折し、重たい空気が漂った。牧原大成に続き、二塁手のレギュラー候補が離脱した。

さらに最大の悪夢が5月31日の広島戦(みずほペイペイドーム)で待っていた。3回に柳田悠岐が二ゴロを放った際、一塁ベースに倒れ込んだ。右ハムストリングを痛め、途中交代。小久保監督はその瞬間から次の手に頭を巡らせた。

「今日はほとんど試合を見ていなかった。采配どころじゃなかった。柳田のことをどうしようかというところで。こうなったときに明日からどう立て直すか。どれが一番オーダーとして得点できるか」。球団と掛け合い、2軍で好成績を残していた佐藤直樹の支配下復帰を即決した。

翌6月1日の同カードで1番で登録即スタメン起用。佐藤直も結果で応えた。小久保監督は「2軍の試合はずっと(映像などで)見ていたので。タイミングが今日だったけど、近いうちに(支配下)という話しは上がっていた。迅速な対応で、フロントの方にはお礼を言いました」と話した。

柳田は右半腱(けん)様筋損傷と診断され、全治まで約4カ月と長期離脱が決まった。好調のチームを支えていた山川穂高、近藤健介との「YYK」クリーンアップは解消。代わって、3番には5月の月間MVPにも輝いた栗原陵矢が入った。ただ、山川は交流戦18試合でノーアーチと不調。近藤も6月12日のヤクルト戦(同)で守備時に右手を負傷と苦しい状況は続いた。

このピンチを救ったのは若い力だった。ドラフト3位ルーキーの廣瀨隆太は15試合でスタメン起用された。プロ初安打まで17打席を要したが、小久保監督は我慢を続け、14日の阪神戦(同)ではプロ初本塁打も飛び出した。小久保監督が2軍監督時代から期待していた高卒4年目の笹川吉康も1軍デビュー。初スタメンとなった14日の阪神戦(同)ではプロ初安打、翌15日の同カードではプロ初本塁打と大器の片鱗を見せた。

笹川のスタメン起用について、小久保監督は「(14日に)スタメンでいこうというのは今週の頭から決めていた。その前にちょっと緊張をほぐすためにも、代走や守備固めで使えればいいなと思っていたので」と説明。12日のヤクルト戦(同)で途中出場させ、スタメン起用への〝下地〟もつくっていた。開幕から2軍暮らしが続いていた柳町達も5月28日に昇格すると、交流戦打率3割5分1厘と外野の一角にはまった。

交流戦の18試合で、2位から5位まではぐっと詰まったが、ソフトバンクは1強状態を築き上げることに成功した。交流戦は「誰かが悪くても、誰かがカバーすれば打線として成り立つ」と力を込めた。投手陣は大きな離脱者はなく、引き続き好調をキープしている。打線も主軸と若手の融合で交流戦も勝ち星を積み重ねた。(小畑大悟)

ソフトバンクの交流戦全結果
5月28日 巨人0―2ソフトバンク(東京ドーム)
5月29日 巨人1―0ソフトバンク(東京ドーム)
5月30日 巨人6ー5ソフトバンク(東京ドーム)
5月31日 ソフトバンク2―1広島(みずほペイペイドーム)
6月1日 ソフトバンク2―0広島(みずほペイペイドーム)
6月2日 ソフトバンク5―3広島(みずほペイペイドーム)
6月4日 中日2―3ソフトバンク(バンテリンドーム)
6月5日 中日1―5ソフトバンク(バンテリンドーム)
6月6日 中日3―0ソフトバンク(バンテリンドーム)
6月7日 DeNA1―10ソフトバンク(横浜)
6月8日 DeNA3―5ソフトバンク(横浜)
6月9日 DeNA8―5ソフトバンク(横浜)
6月11日 ソフトバンク4―2ヤクルト(みずほペイペイドーム)
6月12日 ソフトバンク3―9ヤクルト(みずほペイペイドーム)
6月13日 ソフトバンク6―3ヤクルト(みずほペイペイドーム)
6月14日 ソフトバンク2―0阪神(みずほペイペイドーム)
6月15日 ソフトバンク6―2阪神(みずほペイペイドーム)
6月16日 ソフトバンク1―4阪神(みずほペイペイドーム)

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