博多ストーカー殺人事件・初公判争点は、被告が否認した”ストーカー規制法違反の成否”と”量刑” 検察側「待ち伏せて追従」 弁護側「偶然が積み重なって起きた」

JR博多駅前で元交際相手を刺殺したとして殺人やストーカー規制法違反などの罪に問われている寺内進被告(32)の初公判が17日に開かれた。

寺内被告は、「刺したことは、間違いないですが、待ち伏せしたことは違います」と述べ殺人の罪については起訴内容を認めたが、ストーカー規制法違反の罪については起訴内容を否認した。

寺内被告、うつむきながら法廷入り

注目事件の裁判が開かれた福岡地裁には、17日朝、80席の傍聴席に対し、228人の傍聴希望者が訪れた。

裁判員裁判が始まる直前に法廷入りした寺内被告は、時折うつむきながらも落ち着いた様子で被告席に座った。

検察側が殺人罪・ストーカー規制法違反の罪など起訴状朗読

証言台の前に立った寺内被告に裁判長が名前・住居・職業などを訪ねた後、検察側の起訴状朗読が始まった。

福岡市博多区の飲食店従業員寺内進被告(32)は、去年1月16日・JR博多駅前の路上で、元交際相手の川野美樹さん(当時38)の胸や背中、頭などを包丁で複数回刺して殺害したとされる殺人の罪・おととし11月にストーカー規制法に基づき、川野さんにつきまとい等をしてはならない旨の禁止命令を受けながら、勤務先から帰宅する川野さんを待ち伏せし、つきまとったとされるストーカー規制法違反の罪などに問われている。

「待ち伏せしたことは違います」ストーカー規制法違反の罪を否認

裁判長が、「起訴状読み上げを聞いてどう?」と聞くと寺内被告は、「刺したことは間違いないですが、待ち伏せしたことは違います」と述べ、殺人の罪については起訴内容を認めたが、ストーカー規制法違反の罪については起訴内容を否認した。

争点は「ストーカー規制法違反の成否」と「量刑」検察側・弁護側の冒頭陳述

冒頭陳述で検察側と弁護側は、
(1)事案の概要
(2)殺人事件までの経緯、当日の状況
(3)争点について主張した。

(1)事案の概要(検察側・冒頭陳述)

【ストーカー殺人事件】「元交際相手の川野さんに対してつきまとい等をしてはいけない旨の禁止命令を受けていた被告人が、禁止命令に違反して帰宅途中の川野さんを待ち伏せして、つきまといその直後に包丁で川野さんを殺害した」

【争点】「ストーカー規制法違反の成否」「量刑」

(2)殺人事件までの経緯、当日の状況(検察側・冒頭陳述)

・寺内被告と川野さんの関係

2020年10月ごろ~
【川野さん】人材派遣会社で平日勤務週末は会員制クラブでアルバイト

2021年12月ごろ~
【寺内被告】ショットバーで働き始める(川野さんが働く会員制クラブの系列店)

2022年4月ごろ~
【寺内被告】ショットバーに客と一緒に訪れた川野さんと知り合い、交際開始

交際開始~
【寺内被告】川野さんの浮気を疑うようになり束縛をはじめる
【川野さん】嫌気がさし交際解消を望むようになる

2022年10月
【寺内被告】川野さんのスマホを取り上げたり出勤を待ち伏せしたりする
【川野さん】警察に相談
【警察】寺内被告に対しストーカー規制法に基づく口頭警告

2022年11月10~21日
【寺内被告】川野さんを勤務先の会社で待ち伏せしたり、居酒屋で川野さんと話をして復縁を求める→川野さんに拒まれ会員制クラブに押し掛ける

2022年11月23日
【寺内被告】3回にわたり川野さんに電話(川野さんは着信拒否)川野さんに5通のLINEメッセージ「警察に何いうた」「何年かかっても恨んだる」「あんま舐めてると後悔すんぞわしはしつこいからの」など川野さんの職場に電話をかける

2022年11月26日
【川野さん】職場の従業員から伝え聞き警察に相談
【警察】寺内被告にストーカー規制法に基づく禁止命令

禁止命令~
【寺内被告】川野さんから2度にわたりストーカーとして被害申告されたことに立腹。川野さんに対するいらだちを募らせる。川野さんに会って文句を言い、謝罪させたい、川野さんの返答いかんによっては川野さんを殺すかもしれないなどと考える

2023年1月16日(殺人事件当日)
【寺内被告】手提げバッグに包丁を入れて自宅を出る

午後6時1分
【川野さん】勤務先を退社、家族に帰宅する旨のLINE送信

午後6時3分
【寺内被告】博多区の歩道上で約3分立ち止まって川野さんを待ち伏せ

午後6時6分
【寺内被告】帰宅途中の川野さんを発見し声をかける

午後6時6分~13分
【寺内被告】博多駅に向かっていた川野さんに約173メートル追従警察に被害申告したことに謝罪求める
【川野さん】「離して」「しつこい」「警察で話そう」などと告げる

午後6時13分
【寺内被告】殺意を持って、手提げバッグから包丁を取り出し、川野さんに対し包丁を振り下ろして右前胸部付近を突き刺し、その場に転倒させ、うつ伏せの川野さんに頭部、後頭部、背部等を少なくとも17回突き刺す
【川野さん】多数刺切創に基づく失血によりその場で死亡
【寺内被告】犯行に用いた包丁を手提げバッグに入れ、その場から逃走

(3)争点「ストーカー規制法違反の成否」と「量刑」(検察側・冒頭陳述)

・ストーカー規制法違反の成否

寺内被告が、川野さん殺害の直前に川野さんの職場近くの路上に立ち止まり、その後追従したことが「待ち伏せ」「つきまとい」に該当しストーカー規制法違反になるか?
弁護人は、寺内被告が川野さんと接触したのは偶然だったと主張するが、果たしてそうか?
川野さんと会えると予想、期待していたのではないか?

・量刑(寺内被告にどのような刑を科すべきか)

本件は、川野さんがストーカー規制法に基づき最大限の措置を執ったのに、寺内被告はそれを逆恨みして川野さんを殺害したものであり、川野さんはこれ以上どうすることもできなかったことや、法治国家に対する信頼を損ないかねない、法治国家に対する挑戦というべき重大な事件であることを特に注目すべき

これを前提として
・犯行態様の悪質性が極めて高い
・被害結果は極めて重大
・犯行動機に酌量すべき事情がなく、被告人の意思決定は厳しい非難に値する
などと主張した。

(1)事案の概要(弁護側・冒頭陳述)

【川野さん刺殺事件】
・当日待ち伏せしたという事実は無い
・「殺害しよう」と準備した事実も無い

(2)殺人事件までの経緯、当日の状況(弁護側・冒頭陳述)

2021年12月
【寺内被告】中洲のバーで働き始める

2022年4月
【川野さん】クラブに勤務するようになり、寺内被告が勤めるバーに来店
【寺内被告・川野さん】意気投合し交際

2022年9月
【寺内被告】博多区冷泉町の寮に住むようになるが、電気やガス、水道料金が払えず川野さんを自宅に呼べなくなる川野さんと会う機会が減り、浮気を疑うようになる

2022年10月24日
【寺内被告】ストーカー規制法に基づく口頭警告を受けるグループ店間の交際が禁じられていて罰金が科せられるため、罰金について話し合おうとしたところ、川野さんさんからLINEがブロックされる

2022年12月7日
【寺内被告】川野さんの名前をもじったアカウントからLINEメッセージが来るあおられていると思う

2023年1月15日~16日(殺人事件当日)朝
【寺内被告】後輩と酒を飲む

2023年1月16日(殺人事件当日)午後5時
【寺内被告】自宅を出発(午後8時から勤務先のミーティング予定)

自宅出発後
【寺内被告】延滞していた携帯電話料金を支払いに向かっていたものの、明日からの生活をどうしようと立ち止まり、支払うのを止めるいつも襲撃されることに備えて包丁を持っていた時間をつぶそうと引き返すと川野さんにばったり会うまったく思いがけないことだったストーカーとさげすまれていることや上司も責任をとらされたことを川野さんに伝える川野さんから一言でも謝罪の言葉があると思っていたのに「警察を呼ぶから」と言われる気付いたら、包丁を持っていて、川野さんが倒れていた頭が真っ白だった

2023年1月18日
【寺内被告】出頭しようと思っていた

(3)争点「ストーカー規制法違反の成否」と「量刑」(弁護側・冒頭陳述)

・ストーカー規制法違反の成否弁護側は、川野さん女性刺殺事件について「偶然が積み重なって起きた」とした上でストーカー規制法違反の罪については、無罪を主張した。

電話料金の支払いのため引き返そうとしたところ、偶然川野さんと会う謝罪の言葉が聞きたかったということで、ストーカー規制法違反の「恋愛感情などを充足する目的」に当てはまらない

・量刑(寺内被告にどのような刑を科すべきか)

弁護側は、量刑については、当時の心理状態などが影響していると主張した。

判決言い渡し予定は今月28日

裁判は、今月24日に結審し今月28日に判決が言い渡される予定。

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