消防団の若手、七福神舞を練習 福島県二本松市のトロミ地区

ベテラン勢に七福神舞の指導を受ける若手消防団員ら。手前は修復した面

 伝統芸能の担い手育成が課題となる中、福島県二本松市の国重要無形民俗文化財「石井の七福神と田植踊」を伝えるトロミ地区で、新たに地元消防団の若手らが加わって七福神舞の練習を始めた。来年のお披露目を目標に稽古に励む。

 トロミ集会所で14日、新人が参加して初めての練習会が開かれた。トロミ芸能保存会の大内彦恵会長(72)や最年長の大内栄作さん(84)ら熟練者と、市消防団第5分団の三浦貴大班長(38)ら20~30代の団員5人ら合わせて約20人が集合。若手メンバーは真剣な表情でベテラン勢の指導を受けながら、おはやしに合わせて七福神のユーモラスで福を呼ぶ舞い込みを繰り返した。練習後は会食して語り合った。

 大内栄作さんによると、かつては小正月に七福神が家々を回り、地域の子どもは喜んで見物し、神様ごとに特徴のある踊りも自然に覚えたという。時代とともにそうした機会が減り、石井の七福神と田植踊のうち、七福神舞は鈴石東町と錦町で演じられ、トロミでは田植踊のみが演じられるようになっていた。

 市内の仏具彫刻店に依頼していた面の修復が完成したのを機に、トロミの七福神舞を将来も伝えていくため、ベテラン世代から指導を仰ごうとの声が高まった。トロミは住民間のつながりが強く、消防・水防活動を通した協力意識も高いことから、若手消防団員が伝統芸能の継承にも一役買うことになった。三浦班長は「地域の伝統を絶やしたくない」と責任をかみしめる。

 大内会長は「つないできた伝統芸能をなくしてはもったいない。若い人にしっかり引き継ぐ」と語る。参加者中の最年少で父、祖父と3世代で取り組む佐藤ひよりさん(16)=福島南高二年=は、小学生時代から七福神と田植踊を習っており、「おはやしの笛を上手に吹きたい」と目を輝かせている。

 今後、月1回程度、練習を重ね、来年1月に市地域文化伝承館で開く予定のふるさと芸能祭で発表を目指す。

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