TSMC、3nmチップ製造や先端パッケージングを値上げの噂。NVIDIAやAMDを直撃か

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現在、台湾TSMCが最先端の3nmプロセス製造をほぼ独占しており、アップルを初めとした大手4社が2026年まで製造ラインを予約済みであることは、先日もお伝えした通りだ。要はハイエンドスマートフォンやGPUカード、AIの訓練やクラウドサーバーに使う3nmチップの供給は逼迫するとみられているわけだ。

そうした状況を受けて、TSMCが3nmチップ製造費を値上げする準備を進めていると報じられている。台湾の経済メディア工商時報によると、TSMCは5%以上の「価格調整」を予定しているという。おそらく値上げするとは予想されていたが、サプライチェーン筋が具体的な情報を伝えたのは今回が初めてである。

さらに、2025年には先端パッケージングも約10~20%値上げする予定とのこと。パッケージングとはウェーハから切りだしたチップを基板に接着や配線、成形してパッケージにするなど「製品として扱える形」にする工程である。

この値上げに伴い、パッケージング能力も増加。具体的には、2024年第3四半期前に現在の月産1万7000枚から3万3000枚に、ほぼ倍増すると見られている。

TSMCの先端パッケージング能力のおよそ半分がNVIDIAに占められ、AMDがそれに続くという。なぜ両社がパッケージングを重視するかといえば、主要製品であるGPUやAIアクセラレータはスマートフォン向けチップよりも消費電力が大きく、性能要件もはるかに厳しいためだろう。

2024年後半から3nmチップの需要はさらに増し、工場の稼働率は満杯となり、2025年まで繰延になる分もあるという。それは5nmにも及び、同じく値上げされる見通し。さらに2025年の需要は60万枚(ウェーハ)以上に対して、TSMCの供給は53万枚と推定され、約7万枚足りなくなる計算だ。

この1年でNVIDIAの株価が3倍に跳ね上がったのは、同社がいう「次の産業革命」に向けたAIファクトリーやデータセンター構築で重要な役割を果たすと期待されているからだ。

かたやアップルがiPhoneやiPad、Macに3nmチップを投入したことに続き、次期ハイエンドAndroidスマホ向けチップ「Snapdragon 8 Gen 4」もTSMCの3nm製造になると噂されている。空前のAIブームがスマホの値上げにつながり、そちらの需要を冷え込ませないかを注視したいところだ。

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