アングル:押し寄せる欧州リスクオフの波、7月の需給イベントが追い打ち

Noriyuki Hirata

[東京 18日 ロイター] - 日本株の波乱はしばらく続きそうだ。フランスの政治不安を受けて、欧州勢がリスク投資を減らす動きを強めており、その波が日本にも押し寄せている。加えて需給面では、7月上旬にETF(上場投資信託)による分配金捻出のための売りといった季節要因が加わる。

<キャッシュ・イズ・キング>

18日の日経平均は、前日の下落から自律反発した。前日の日本株安は、仏政局の先行き不透明感がその一因とされた。仏議会選では、極右の国民連合(RN)が左派連合を抑えて第1党に躍進し、マクロン大統領が率いる与党勢力は3番目の勢力にとどまるとの見方が有力で、政局混乱が懸念される。

財政出動による金利上昇が連想され、リスク資産売りにつながった。仏CAC40の下げ基調が継続したことが日本市場でも嫌気された。

翌日には下げ止まり、いったん安心感が出たものの、第1回投票日の30日、決選投票日の7月7日を前に、警戒感はくすぶっている。

日本株にとって逆風になりそうなのが、欧州のパッシブファンドの動きだ。マザーマーケットが安定してはじめて、域外への投資に余力を回す傾向があるといい、反対に足元がぐらつくと「キャッシュ比率を高めるなどの守りに入りやすい」と、JPモルガン証券の高田将成クオンツ・ストラテジストは指摘する。

海外勢の売買動向をみると、日本株が上昇した1―3月は、パッシブファンドの多くが含まれるとみられる現物株は3兆円規模の買い越しだった。その後、4─5月は1.6兆円の買い越しにペースダウンしている。

足元では、仏選挙を前に投資家のリスク許容度の低下が見込まれる中、日本固有の新規の買い材料に乏しいこともあり「欧州勢が日本株を積極的に買うことはないだろう」(JPモルガンの高田氏)とみられている。

<配当再投資への期待、例年とは異なる事情>

一方、下値を支えるとみられるのが、配当再投資の動きだ。例年、6月末にかけて配当再投資への期待が盛り上がる。フィリップ証券の増沢丈彦・株式部トレーディング・ヘッドの試算によると、3月期決算企業の配当金が今週と来週にかけて7.3兆円支払われる。「全てが再投資に回るわけではないが、需給は良くなると見るのが自然」とされる。

再投資は、配当の支払いを受けた銘柄の買い増しに充てられる傾向がみられることから、とりわけ高配当とされるバリュー株の下支え効果が期待されるという。

昨年は株高に伴って、年金基金などによる6月末のリバランスの売りが逆風となり、株価の押し上げは限られたが、今年は3月の高値以降、月をまたいで日柄調整を経ており、リバランスによる下押しリスクは軽減していると見られる。

もっとも、今年は欧州の政局不安に伴う資金の巻き戻しリスクとタイミングが重なるため、下支え効果はある程度、打ち消される可能性があるという。

このほか、7月上旬にETFの分配金捻出のための換金売りによる下押し圧力が見込まれるのも年中行事だ。フィリップ証券の増沢氏の現時点の試算では、今年の換金売りの規模は、7月8日と10日の2日間で1.1兆円になる。

「ETFの分配金は再投資には回らず、ほぼ全てが下押し圧力になり得る」と、大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリストは予想する。

その後の7月後半には4―6月決算シーズンが控えている。足元の円安継続を背景に「高い進捗率が見込まれるが、不透明な環境を踏まえると業績予想の上方修正は多くないのではないか。中間決算に向けた動きを確認するにとどまるだろう」と三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストはみている。

7月前半のイベントを通過すれば夏枯れムードが強まるとみられることから「配当再投資の動きが一巡し、ETF換金売りが出る前が、利益確定売りのタイミングになり得る」と増沢氏は指摘している。

(平田紀之 編集:橋本浩)

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