「年収の壁」を超えて働けば手取りが1200万円増える?政府の試算について解説

年収の壁は、一定の収入を超えると手取りが少なくなる現象です。

政府は、女性が「年収の壁」を超えて働くと、生涯の手取り額が1200万円増えるという試算結果を公表しました。

どのような条件で試算したら、手取りが1200万円増える結果になったのでしょうか。

この記事では、年収の壁を超えて働いた場合の手取り額について解説します。

試算結果の概要と結果

2024年6月に行われた「女性の職業生活における活躍推進プロジェクトチーム」において、「女性の出産後の働き方による世帯の生涯可処分所得」が試算されました。

出典:厚生労働省「女性の出産後の働き方による世帯の生涯可処分所得の変化(試算)」(以下同)

上表の②-Bと②-Cのケースを比較して、生涯の可処分所得(手取り額)がいくらになるか試算しました。

出産後、年収100万円(「年収の壁」範囲内)の場合、給与所得と年金所得の合計は約5500万円でした。

配偶者手当や配偶者控除を加味すると、生涯可処分所得は約5990万円です。

年収150万円(「年収の壁」超え)の場合、給与所得と年金所得の合計は約6900万円でした。

配偶者控除を加味すると、約7100万円です。

年収100万円の場合と、年収150万円の場合の生涯可処分所得を比較すると、年収150万円の方が約1200万円多いという結果でした。

また、年収200万円の場合と比較すると、生涯可処分所得は約2200万円の差になると試算されています。

政府が試算を公開した背景には、年収の壁を超えて働くメリットを感じてもらう目的があります。

年収の壁を超えて働くメリットと懸念事項

今回の試算結果から、年収の壁を超えて働くと、可処分所得が増えるというメリットがあります。

では、所得が増える以外のメリットや懸念事項についても、確認しておきましょう。

年収の壁を超えて働くメリット

年収の壁を超えて働くメリットは、以下の2つです。

  • 傷病手当金や育児休業給付金が受けられる
  • 年金の受給額が増える

年収の壁を超えて働くと、勤務先の社会保険に加入することになります。

社会保険に加入すれば、私傷病等で働けない場合に「傷病手当金」が給付されたり、育児で休業する場合に「育児休業給付金」が給付されたりします。

また、厚生年金に加入するため、将来受け取れる年金額が増えるというメリットもあります。

年収の壁を超えて働く場合の懸念事項

所得が増えるメリットがある一方で、働く時間が確保できないという懸念があります。

保育園や習い事の送迎や、学校行事の参加など、子育てをしながら働く時間が確保できない人もいるでしょう。

働くために子どもを託児所に預けたり、習い事に通わせたりして、その分の費用がかかる可能性もあります。

また、社会保険料や年金受給額は現在の水準を基準にしています。

将来的に、社会保険料の引き上げや年金受給額が目減りした場合、同じ試算結果にはならない可能性もあります。

「所得が増える」という試算結果だけを見て、年収の壁を超えて働く人は増えるのでしょうか。

働き手が不足している中、政府は女性、若者、高齢者など、多様な働き手の参画を促しています。

女性の就業をサポートするために、政府がどのような施策を打ち出すのか、今後の動向に注目が集まります。

出典

  • 厚生労働省「女性の出産後の働き方による世帯の生涯可処分所得の変化(試算)」

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