金守氏版画、独教会に寄贈 富山新聞で藤子Ⓐ氏の上司 妻「友好の架け橋に」

金守氏が手掛けた版画を鑑賞するザクシンガー総領事=富山市内

  ●棟方志功氏に師事

 元富山新聞社員で漫画家・藤子不二雄Ⓐ氏の上司だったことでも知られる版画家・金守世士夫氏(2016年死去)のキリスト教をテーマにした版画作品が10月、独ライプツィヒの聖トーマス教会に納められることになった。寄贈を決めた妻嘉子さん(88)は「日独友好の架け橋となればうれしい」とし、世界的な板画家・棟方志功氏に師事した金守氏の画業に光が当たることに期待している。

 寄贈される作品「旧約聖書より」は金守氏の初期の作品で、両端にイエス・キリストと聖母マリアを描き、中央には聖書の有名な場面を表現している。版木は失われており、現存するのは嘉子さんが所有するこの1点のみとなっている。

 嘉子さんによると、金守氏は少年時代に聖書を熟読し、長年構想を温めていた。生前には「イメージして描いたが、もし(解釈が)間違っていたら困るなあ」と話していたという。

 聖トーマス教会は「音楽の父」と呼ばれるバッハが音楽監督を務め、その墓もある。宗教改革のきっかけとなった神学者マルティン・ルターが説教したことでも知られ、欧州の文化、歴史的に著名な教会となっている。

  ●独総領事が鑑賞

 2022年、ライプツィヒで金守氏の展覧会が開かれて好評を博した縁から、金守夫妻と親交があり教会の広報担当を務める髙野昭夫氏(富山市出身)の働きかけで寄贈が決まった。

 18日、富山市内で作品が披露された。作品を鑑賞したメラニー・ザクシンガー独総領事は「細部まで描かれており感銘を受けた。両国の結びつきのシンボルになる」と語った。

 嘉子さんは「家に長い間しまってあった作品が、多くの人に見てもらえる教会で飾られることになり、大変ありがたい」と話した。寄贈作品は7月25~29日、富山市の県民会館に展示される。

 ★金守世士夫(かなもり・よしお)氏 1922(大正11)年、高岡市生まれ。版画家。東京の美術学校で学び、46(昭和21)年に中国から復員後、富山新聞社に入社。当時、福光町(現南砺市)に疎開していた板画家・棟方志功氏に師事した。新聞社時代、漫画家・藤子不二雄Ⓐ氏の「最初の上司」だった。藤子Ⓐ氏の自伝的漫画「まんが道」には金守氏をモデルとしたキャラクターが登場する。

金守世士夫氏

© 株式会社北國新聞社