「これといった決め球がない状態」から2年。「キレが出てきた」オリックス新セットアッパー本田仁海の秘めたる思い【オリ熱コラム2024】

交流戦を10勝8敗の6位で終えたオリックス。ただ、シーズン通算では29勝33敗2分でいまだ5位。首位のソフトバンクとは13ゲーム差で、交流戦が始まる前よりもさらに離されてしまった。先発投手陣だけを見ても、エースの宮城大弥をはじめ、山岡泰輔、山崎颯一郎、宇田川優希、阿部翔太、小木田敦也といったリーグ3連覇に貢献した選手たちが一軍にはいない状態で、交流戦ラストゲームで戻ってきた2023年新人王の山下舜平大もまだ勝ち星はない。

そんな中でも、ブルペンには明るい材料が多い。ベテラン山田修義に、ルーキー古田島成龍。昨季の右肘靭帯損傷を乗り越えた本田仁海が今年5月に復帰し、新外国人のアンドレス・マチャドも勝ちパターンとなって、交流戦終盤には7連勝も記録した。いまだ借金4で踏みとどまっているのはリリーフ陣の活躍が大きいと言えるだろう。中でも本田は昨季の悔しさを糧に、今春のキャンプから精力的に取り組んできた。
22年の秋季キャンプでは「僕にはこれといった決め球がない状態で、真っすぐとチェンジアップでやってきた。それでチェンジアップも後半戦に入ってから打たれ始めたりしたので、フォークでしっかりカウントも取れる決め球にしたい」と話していた本田。今季は、フォークの精度がかなり上がっている。本人も「あの時に話していたフォークでカウントを取れるようになってきました」と実感があるようで、持ち味であるストレートは「2年前に比べたらスピードは出てないと思うんですけど、回転数を見たら全然違うので、キレはあると思う」と手ごたえを口にしている。

キレが出てきた要因については、「ちょっと腕をショートアームっぽくしたことぐらいで、他には特に意識はしてないし変わってないですね」と語る本田。現在はセットアッパーという大役を担い、「やり甲斐はめちゃくちゃあります」と、こちらも思わず喜んでしまいたくなるぐらい瞳を輝かせながら話していたのが印象的だった。「投げるだけで幸せですけど」と付け加えるところは、苦労人でもある本田らしさを感じる。二軍で調整中のリリーフ陣が戻ってきても、今や本田からセットアッパーの座を取り戻すのは難しいだろう。「投げられなかった悔しさ」を胸に奇跡の大逆転を信じて“ひとみちゃん”は右腕を振り続ける。

取材・文⚫︎どら増田
写真⚫︎野口航志

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