福島県南相馬市の漁師桑折武夫さん(74)と孫の亮佑さん(26) 漁継ぐ孫へ新造船 門出へ22日進水式

感謝を込めてこれまで使っていた旧「第3長栄丸」のペンキを塗り直す武夫さん(左)と亮佑さん

 福島県南相馬市鹿島区の漁師桑折武夫さん(74)と孫の亮佑さん(26)は漁船「第3長栄丸」を新造した。22日に真野川漁港で進水式を行う。東日本大震災の津波で当時の漁船が大破し、武夫さんは廃業も考えたが、亮佑さんから「また船に乗りたい」と説得を受け、思いとどまった経緯がある。安全な航行と大漁を祈りながら、出港準備を進める。

 震災後、大破した漁船の代わりに、津波で陸まで流されていた被災船を引き取って改良し、2014年に漁業を再開した。その後、亮佑さんが漁に加わった。

 亮佑さんは震災前に武夫さんの漁船に乗せてもらうことがあり、祖父の姿を見て育つ中で、海や魚への強い思いが芽生えた。「あの背中に追いつきたい」。亮佑さんは憧れの祖父を目指して高校卒業後、迷うことなく漁師の道に進んだ。

 今回、国の補助金を受け新造した船は、レーダーやソナーなど最新機器を積み込んだ。船主の名義は亮佑さんにした。日に日に漁業への思いを強くして夢中になって漁に出ている孫の姿を見て、武夫さんは漁を任せたいと考えるようになった。新しい船で漁業を継いでいってもらいたいとの思いを込める。

 本格的な漁は7月ごろから。シラスやタコ、タチウオなどを捕る。亮佑さんは「何でもチャレンジして、やれる限りのことをやっていきたい」と力を込める。

22日に進水式を行う新「第3長栄丸」(手前)

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