「白小豆」産地目指す、郡山・西田で始動 流通量少ない白あん原料

(写真上)白小豆の種をまく石原教授の研究室のゼミ生と地域住民ら=郡山市西田町、(写真下)国内で希少な白小豆(石原教授提供)

 福島県郡山市西田町で、白あんの原料となる「白小豆」の産地化を目指す共同企画が始動した。全国的にも流通量の少ない貴重な作物を地域の新たなブランド産品として売り出し、耕作放棄地の解消や地域の持続的な農業の創出を後押しする。今月から試験栽培が始まり、住民らは「新しい農業ビジネスにつなげたい」と意気込んでいる。

 住民、宮城学院女子大と協力

 地元住民でつくる西田町アグリプロジェクトと、宮城学院女子大(仙台市)の現代ビジネス学部で地域産業のマーケティングなどを研究する石原慎士教授(54)の研究室が共同企画を進める。研究室が取り組む、会津で受け継がれる「主菓子(おもがし)」の文化を伝承するプロジェクトの一環で、本県で白小豆の生産普及を目指す石原教授と、地域の農業を持続させるために需要が見込める新しい作物を模索していたアグリプロジェクトの思いが合致して動き出した。

 石原教授によると、白小豆は面積当たりの収穫量の少なさなど栽培が難しいことから、比較的収穫量が多く、栽培が容易なインゲン豆を使用した白あんが普及したという。白小豆から作る白あんの流通量は、白あん全体のうち0.1~0.2%ほど。県内の老舗和菓店でも「仕入れたくても入手しづらい状況が続いている」という。

 「西田のような中山間地域では大規模集積の農業は難しい」と石原教授。希少な作物を生産し「欲しいところへ売ることで新しい農業ビジネスになるのでは」と可能性について語る。

 今月1日には西田町の畑で石原教授の研究室のゼミ生5人が農家の指導で畑のうね立てをし、種をまいた。今後は約20アールの畑で、秋に収穫し品質や収穫量などを確かめる。順調に育てば約100キロ分の白小豆が収穫できる見通しだ。

 来年以降は商品化や販路開拓なども視野に入れており、石原教授は「生産者のやる気につなげていきたい」と話す。西田町アグリプロジェクトの会員で、6次化商品の生産や開発を手がけるアルファーフーズ(郡山市)の増子義夫社長(70)は「耕作放棄地で白小豆の生産が収入になれば、作ってみようと思う農家も増えてくるのでは」と期待を寄せる。(津村謡)

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 白小豆 小豆の一品種。種子は白色でわずかに褐色を帯びる。江戸時代から白あんの原料として使われ、現在も高級和菓子や老舗和菓子店などで使用している。国内の生産地は北海道や岡山県など。

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