PENTAX 17 ハンズオンレポート! ついに姿を現わしたフィルムコンパクトカメラの使い方は?

By 柴田 誠

リコーイメージングは、ハーフサイズフォーマットの単焦点フィルムコンパクトカメラ「PENTAX 17」(ペンタックス イチナナ) を2024年7月12日に発売する。ボディーカラーはシルバーのみ。希望小売価格は117,700円 (税込)。実売価格は88,000円 (税込) 前後になる見込みだ。

「PENTAX 17」は、PENTAXブランドでフィルムカメラの開発を検討する「フィルムカメラプロジェクト」から誕生した。

モデル : 藤井智弘さん

■ハーフサイズフォーマットを採用

名前の「イチナナ」は、ハーフサイズフォーマットの画面サイズ (17×24mm) からきている。ハーフサイズの1コマは、35mmフルサイズ (36×24mm) の約半分のサイズのため、36枚撮りのフィルムなら倍の72枚の撮影が可能になる。部品点数を減らしたり、金属部分を減らすなどして小型軽量化が図られている。

「PENTAX 17」で撮影したネガフィルムは、ハーフサイズなので縦位置のフォーマットになる。現像時にハーフサイズであることを伝えると、1コマごとのプリントか2コマで1枚のプリントかを選択できるそうだ。

「PENTAX 17」で撮影したネガフィルム

■フィルムカメラならではの操作感を楽しめる

カメラのバッテリーは、フィルムカメラでおなじみのCR2 (3Vリチウム電池) が同梱されており、グリップ部に装着するのが最初の作業だ。

初めてフィルムカメラを使う人も安心してフィルムをセットできるように、フィルムの先端を差し込んで装填するイージーローディング方式を採用する。

フィルムを背面から抑える圧板はプラスチック製を採用した。

フィルムを巻き上げてクランクが回転するのを確認できたら、フィルムの装填が完了。レバーによる手動巻き上げ式で、フィルム一眼レフの巻き上げ機構を継承した設計となっている。巻き上げレバーの予備角は35°、巻き上げ角は130°。ハーフサイズということもあって、小刻みな巻き上げはできない仕様になっている。

装填したフィルムの感度は、フィルムを装填するたびに手動で設定する。設定範囲はISO 50〜3200で、DXコードには対応していない。

背面には、切り取ったフィルムのパッケージを入れておけるメモホルダーを装備している。ファインダー右脇にある穴はケーブルスイッチ端子。

フィルムの巻き戻しは、クランク式の手動巻き戻しとなっている。底面のボタンを押して、クランクを回してパトローネにフィルムを巻き取る。フィルムを撮りきらなくても途中で巻き戻すことができるが、撮影途中で感度を変えることはできないので気をつけよう。

■充実した基本設計

レンズは、新開発の25mm単焦点レンズ (35mm判換算 約37mm相当) を搭載する。描写性能に定評のあった単焦点コンパクトカメラ「PENTAX エスピオ ミニ」(1994年発売) の光学系をベースに、ハーフサイズフォーマット用に新たに設計されたもので、HDコーティングを採用した3群3枚構成。9枚羽根の虹彩絞りを採用し、最小絞りはF16。フィルター径はφ40.5mmだ。

ボディ中央に設けられたファインダーは、アルバダ式ブライトフレームファインダーとなっている。視野率は80%で、撮影範囲がブライトフレームで表示される。

ピント合わせは手動によるゾーンフォーカス方式を採用する。レンズの鏡筒部分に設けられたゾーンフォーカスリングを回転させ、6つのアイコンを選択する。アイコンは、ファインダーを覗いた状態で見えるように設計されている。マクロ撮影では約0.25mの接写が可能となっている。

レンズ下部。ゾーンフォーカスのアイコンに連動して指標が距離を示すようになっている。

■細部への隠れたこだわりにも注目

電池室を止めるネジはマイナスネジが採用されている。デザイン的な意味合いもあるが、コインなどですぐに開けられるようになっているので便利だ。

ストラップホールもこだわりを感じさせる部分のひとつ。グリップ下にもストラップホールが設けられているので、両吊りだけでなく縦位置で吊るしたり、ハンドストラップを装着することもできる。

背面から見た操作部。トップカバーと底面はマグネシウム合金製で、「PENTAX LX」75周年記念モデルのボディカラーに採用されたチタンカラーをイメージしたものになっている。ボディのあちこちにあるPENTAXのロゴは、さまざまな年代のものが取り入れられているそうだ。

内蔵フラッシュはガイドナンバー約6 (ISO100・m) で、25mmレンズの画角をカバーする。質量は290g (フィルムと電池を除く) だ。

「フィルムカメラプロジェクト」とは

リコーイメージングは、近年若年層を中心に人気が再燃しているフィルムカメラを新たに創り出すチャレンジとして、2022年末に「フィルムカメラプロジェクト」を開始した。 PENTAXブランドでのフィルムカメラの開発検討を行い、2024年3月には製品化に向けた開発段階に入ったことが発表されていた。

まずはフィルムコンパクトカメラからスタートし、ゆくゆくはフルメカニカルの一眼レフカメラへと進めていくというロードマップになっている。それがどのように実現されるのか、今後の展開も注視していきたい。

PENTAX 17 主な仕様

型式 ハーフサイズレンズシャッターフィルムカメラ
使用フィルム 35mmフィルム
レンズ HD PENTAXレンズ
[焦点距離]25mm (35mm判換算 37mm相当) [開放F値]F3.5 [レンズ構成]3群3枚 [画角] 61° (対角) [最大撮影倍率] 約0.13x (0.25m時) [フィルター径] φ40.5mm
ファインダー アルバダ式ブライトフレームファインダー
ピント合わせ ゾーンフォーカス (手動選択方式)
シャッター プログラムAE電子シャッター (1/350秒~4秒、バルブ)
内蔵フラッシュ ガイドナンバー約6 (ISO100・m)
幅×高さ×奥行き 約127.0×78.0×52.0mm (突起部を除く)
質量 290g (フィルム、電池を除く)
付属品 レンズキャップ O-LC40.5、ストラップ O-ST191、リチウム電池 CR2

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