ファイナンシャルプランナー・深田晶恵さんが指南!「老後資金」を守りながらお金を使う方法とは?

50代ならまだしも、60代、70代ともなれば、お金を貯めることは容易ではありません。「お金が貯まらない習慣」を改めて、貯蓄を守る(老後資金を減らさない)ためには、どんな心がけや具体策が有効でしょうか? ファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんに伺いました。

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PROFILE
ファイナンシャルプランナー 深田晶恵さん

ふかた・あきえ●株式会社生活設計塾クルー取締役。1967年生まれ。ファイナンシャルプランナーとしてコンサルティングを行う他、メディア出演、講演活動、新聞や雑誌などのコラムも人気。
著書に『これからの生活どうなる?に備える 記入式 年金生活ビギナーのための家計練習帳』(講談社)など。

老後の貯蓄を減らさないためのお金を守る使い方のヒント

ヒント①「ちょこちょこ使いの銭失い」 にならないために、現実を把握

働いて毎月収入を得ていた現役世代から、年金と貯蓄を崩して使うリタイア世代へと移行する人が多いマチュア世代。現役のときならまだしも、リタイア後は無自覚にちょこちょこお金を使う習慣を見直す必要がある。では、何から始める?

「まずは無駄遣いのチェックです。無駄遣いだったと思うお金をたし算して、1カ月、1年間の合計額をかけ算で出しましょう。その額に『ハッ』とするのが、第一歩です」

リタイア世代にとっては、割り算と引き算も重要だ。

「たとえば今65歳なら、あと30年生きるとして計算してみましょう。現在ある貯蓄から、不測の事態に備えて500万~1000万円をキープ。残りを30年で割り、さらに12カ月で割ると、1カ月に取り崩せる貯蓄額がわかります。そこに毎月の年金額を加えれば、1カ月に使えるお金がわかりますよね」

現実を知ると、「少額だから、まあ、いいか」とか「断るのが苦手で買ってしまう」なんて甘いことは言っていられなくなりそう。だからといって、節約ばかりの暮らしはしたくない。

「子どもが独立したあとは、生命保険の見直しを。電話も格安スマホに替えることで料金が安くなります。保険料と通信費を見直すだけで、月1万円近く安くなるケースが多いんです。そうなると年間12万円、10年で120万円。食費などを節約して減らすより効果的です」

ヒント② クレジットカード、電子マネー……「お金の出口」を減らしましょう

現金、クレジットカード、電子マネー……。支払い方法が多様化する時代だが、「お金の出口」はできるだけ少なくして、支出をきちんと把握することが大事だと、深田さん。

「私自身、クレジットカードは2枚まで、電子マネーは交通系ICだけで、〇〇ペイなどは使っていません。支払い方法が多ければ多いほど確認が煩雑になり、何にいくら使ったかわからなくなりますから。クレジットカードが2枚なのは、不正利用などでカードを止めることになると、再発行までに2週間ほどかかってしまいますから、念のためのもう1枚です」

コロナ禍以降、急激に普及してきた電子マネー。いちいち小銭を出さなくてすみ、ポイント還元率が高いなどお得感もあって便利だが、使いすぎる恐れもある。

「無駄遣いが心配なら、オートチャージは今すぐやめましょう。いくら使ったか自覚できず、あとで明細を見て青ざめることが多いんです。残高が減った段階で、1万円ずつチャージするほうがいいですね。手間はかかりますが、そのつど『今月はもう3万円入れちゃった。少し使いすぎたな』などと反省できますから」

ヒント③ 明細のチェックは不可欠。 収支の把握はもちろん、不正使用されていないかもチェック

「クレジットカードの明細、ちゃんと確認していますか?」と、深田さん。明細が届いても合計額だけ見て、「引き落とし口座の残高が足りていれば安心!」と思いがちだ。

「クレジットカードを不正利用されるケースが増えています。日付や金額、お店などが実際と合っているか確認しましょう。契約したことを忘れて使用していないサブスクで毎月一定額が引き落とされていることも。1000円程度だと気づきにくいこともあるので、明細を1行ずつ確認しましょう」

深田さん自身、紙の明細で、マーカーで色分けしながら1つずつチェックしている。

「スマホの画面上で確認するより、紙のほうがチェックしやすいんです。ワインやスイーツは赤、旅行関係は黄色、美容・健康関係は青などカテゴリー別に色分けします。『今月は使いすぎた!』というときは、色別の合計を出して前月と比較すれば、原因が明白になります」

ヒント④ 水道・光熱費などの「家計の見える化」で 家族の協力を求めましょう

値上がりが著しい光熱費。節約したいのに「家族が全然協力してくれない」と嘆く人は少なくない。

「光熱費は1人だけ頑張っても減りません。ガミガミ言うより『見える化』するほうが効果的です」

昨年や一昨年の同じ月の水道・光熱費と、今年の金額を比較できるような表やグラフを作って、目立つところに貼っておくのがおすすめだ。

「男性は特に、経費削減の目標数値があると頑張れるようです」

なお、電力会社は自由に選ぶことができる。「エネチェンジ」などの比較サイトで調べると、今より安い電力会社が見つかるかもしれない。

ヒント⑤ 食費や日用品費の予算を決めて、予算内に収めるための仕組みをつくりましょう

食費や日用品費などの家計費は、小遣いや固定費とは別に予算を決めて管理したい。深田さんのおすすめはデビットカードの利用だ。

「口座からの即時引き落としなので、支出を把握しやすいんです。デビットカード専用の口座をつくり、毎月の予算分を入金し、残高を確認しながら買い物をします。わが家ではカードを家に置いておき、夫婦で共有しています。専用のスマホアプリと連動させていて、夫がカードで買い物すると私のスマホに取引履歴が送られてきて、内容がわかります。料理好きの夫が1週間分の献立を考えていますが、必要なものだけを買うように買い物リストを作ったら食費が減りました。現金派の人は、家計用の財布を用意して予算分のお金を入れ、そこから使うようにするといいですね」

「お買い得」につられてムダな買い物を増やさないようにするには、買い物リストが役立つ。

取材・文/神 素子

※この記事は「ゆうゆう」2023年12月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

※2023年11月30日に配信した記事を再編集しています。


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