輪島塗のキリコ、小松で復興の灯 被災免れ桝本さん方に 長男熱望、祭り忘れられず

子供キリコを眺める拓海さん(左)と家族=小松市古河町

 能登半島地震で被害を免れた輪島塗の子供キリコ1基が19日までに、小松市古河町で美容室を営む桝本尚子さん(39)方に届いた。輪島市の親類から一家の長男拓海さん(10)に譲られたもので、昨年夏の輪島大祭に参加して以来、祭りの熱気が忘れられなくなった拓海さんにとっては憧れのキリコ。美容室に展示されたキリコを眺めながら拓海さんは再び能登の祭りに参加できる日が来ることを心待ちにしている。

 桝本さんは輪島市鳳至町の出身で、毎年8月に一家で輪島大祭を見物に訪れていた。拓海さんは昨年、4年ぶりの通常開催となった大祭でばちを握り、初めてキリコ太鼓を体験。「太鼓に合わせてみんなが掛け声をしてくれたのがうれしくて、すごく楽しかった」と振り返る。

 以来、キリコのとりことなった拓海さんは、設計図を書いて親に作ってもらうようせがんだ。手に入るつてはないかと、桝本さんは輪島の実家近くに住む、祖母の妹である室岡和子さん(80)に相談。室岡さん方では男児の初孫が誕生したのを祝って手製した高さ2メートルの子供キリコがあった。

 元日の能登半島地震で桝本さんの実家も室岡さんの自宅も全壊した。室岡さんの家は取り壊しを余儀なくされたが、「家宝」のように大切にしていた子供キリコは難を逃れた。室岡さんはキリコを欲しがっていた拓海さんのことを思い出し、小松に届けることにした。

 贈られたキリコは桝本さんが営む美容室「masu.cut(マスカット)」の玄関に展示された。祭りの興奮がよみがえり、一晩中眺めていたという拓海さんは「もしいつか祭りが行われれば、何があっても参加したい」と力強く話した。

 美容室には桝本さんが輪島実高の卒業制作で作った輪島塗の椅子やテーブルも設置され、桝本さんは「お客さまに輪島の魅力を伝えていきたい。いつか、大祭に合わせ、このキリコを輪島で飾ることができたらうれしい」と願った。

© 株式会社北國新聞社