【識者推奨|大岩Jのパリ五輪メンバー】OAの起用はナンセンス。ボランチにはあえて山根陸を推したい

7月末にパリ・オリンピックが開幕する。4年に1度の大舞台に挑むメンバーはどんな顔ぶれになるか。ここでは、スポーツライターの加部究氏が推奨するU-23日本代表の18人を紹介する。

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五輪サッカーには、開催そのものが疑問視されるほど無理難題が詰め込まれている。

そもそもFIFAが傍観を貫き、参加の是非までクラブや個人の意思に委ねている状態なので、IOCが定める18名の登録人数で真夏のトーナメントを良好なコンディションで戦い抜くことなど不可能に近い。どうしても指揮官には、苦肉の策を覚悟のパズル作成が求められる。

もちろん五輪での結果だけを睨めば、オーバーエイジ(OA)の起用は有効な解決策だ。だがフル代表の森保一監督を筆頭に、日本サッカー界が掲げる目標は五輪の金メダルではなく、ワールドカップ制覇に変わりつつある。

逆に五輪はW杯に到達するための中継地点と見なされており、U-23代表にはフル代表に何人を送り込めるかが問われている。そして日本代表の強化という最優先課題と向き合えば、個々の所属先でのシーズンを通しての活躍が大前提となるわけで、そう考えればOAの起用はナンセンスでしかない。

例えば遠藤航の招集が巷間で言われているが、もし五輪に出場したらリバプールでのレギュラー争いは失地回復からのスタートとなる。遠藤が参加すれば五輪代表のプラスにはなるが、それでプレミアリーグやチャンピオンズリーグの出場機会を失うなら、五輪では過去最高の決勝進出でも果たさない限り、日本サッカー界は黒字決済に漕ぎつけられない。それなら五輪には当該年齢の選手たちを数多く出品し、欧州スカウトの目に晒すほうが得策だ。

とにかく真夏の過密日程だけに、全てのポジションにバックアッパーの想定が要る。取りあえずU-23アジアカップを制したメンバーを中心に4-3-3でスタメンを組めば、GKが小久保玲央ブライアン、DFが右から関根大輝、高井幸大、西尾隆矢、大畑歩夢、MFは藤田譲瑠チマをアンカーに、インサイドハーフが荒木遼太郎と松木玖生。前線は右から山田楓喜、細谷真大、平河悠となる。

鈴木彩艶は五輪でアピールしなくても十分に注目されているようなので、今回は小久保を中心に据えて飛躍の場として欲しい。

山田は3トップのウインガーというより4-4-2の右MFだが、いずれにしてもレフティで高精度のFKという武器もあるので残しておきたい。松木には試合展開に応じてボランチでもトップでも使えるユーティリティ性があり、荒木とのコンビはそのまま最前線でも適用できることがFC東京でも証明済みだ。

両翼は最激戦区で多士済々だが、絶好調を維持する平河を軸に、三戸舜介と斉藤光毅を加えた。さらにセンターフォワードとウィングを兼用できる藤尾翔太も不可欠。本来なら未来のエース候補として20歳の俵積田晃太を組み込みたいところだったが、現状での攻守両面での継続性を考えると、彼らに割って入るのは難しい。

またボランチは、チームの活動に継続的に参加してきた川﨑颯太、山本理仁、田中聡らを優先するべきなのだろうが、あえて関根のバックアップも考慮して山根陸を推した。

日本では、いつの大会もディフェンス陣の人選が悩ましい。もしOAを自由に選べるなら、CBとSBを兼用できるレフティの伊藤洋輝か町田浩樹が喉から手が出るほど欲しいところだが、さすがに望むべくもない状況だ。

最終的にはCBを4枚用意するか、左右両SBが可能な畑大雅を優先するかで悩み抜いたが、負荷の高さを考えてSBのバックアッパーを確保した。ただしCBのほうも、常にカードや故障のリスクと背中合わせなので、この人選では山根や藤田が最終ラインに下りる最悪の事態も覚悟しておく必要があるかもしれない。

取材・文●加部究(スポーツライター)

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