「記憶、飛ぶくらいに刺した」記者に語った心境 “博多ストーカー殺人”元交際相手の男の裁判員裁判 待ち伏せ否認【前編】

JR博多駅の近くで元交際相手の女性を刺して殺害したとして殺人などの罪に問われている男の裁判員裁判の初公判が開かれた。被告は殺害を認めつつ、ストーカー行為は否定した。

束縛強く…交際長続きせず

2024年6月17日、福岡地裁。その男は眉間に皺を寄せ、俯きがちに廷内に現れた。

逮捕時から変わらない眉の形。鋭く整っている。殺人やストーカー規制法違反などの罪で起訴されている寺内進被告(32)だ。

福岡市・中洲の飲食店グループで働いていた寺内被告。職場を通して知り合い、2022年の春に交際に発展したのが川野美樹さん(事件当時38)だった。

2人を知る店の関係者は「川野さんが、うちのグループにアルバイトしてたのが1年前。一応、グループ内での恋愛は禁止なんですよね。2人は隠して付き合っていたのかな」と話す。

2人が働く飲食店グループでは従業員同士の交際は禁止。発覚すれば男性側に罰金のペナルティが課せられる決まりまであった。秘密で交際を続けていた2人だったが、寺内被告は互いのスマートフォンに位置情報アプリをインストールするなど束縛が強く、交際は長続きしなかった。

半年後、「携帯電話を取られた。相手とも別れたい」「別れようと言っても聞かない」などと警察署に相談していた川野さん。警察が寺内被告に警告を行ったが、寺内被告は川野さんの職場に押しかけ、2022年11月、警察は寺内被告に対してストーカー規制法に基づく川野さんへのつきまといの禁止命令を出した。

しかし、その51日後。事件が起きてしまった。

「男は全く無言。何かを振り下ろしている」

起訴状などによると寺内被告は2023年1月17日、JR博多駅前の路上で川野さんの胸や頭などを刃渡り約24cmの包丁で何度も刺して殺害したとされている。

当時、目撃した男性は「『きゃー』みたいな声を聞いた。男は全く無言だった。見ると男が被害者に乗っかかるようにして、何かを振り下ろしているというか、そんな状態だった」と話していた。

犯行後、現場から逃走していた寺内被告。2日後に潜伏先の中洲付近で逮捕されると警察の調べに対し「間違いありません」と容疑を認めた。

寺内被告へ接見 当時の状況語る

事件の翌月の2023年2月、取材班は寺内被告と福岡市内の拘置所で接見。当時の状況が被告の口から語られた。

■福岡拘置所での接見(2023年2月)
記者「事件前も川野さんに好意を寄せていた?」
寺内被告「嫌いとイラつきと怒りと、全てが混じっていた」

記者「なぜ事件現場に行ったのか?」
寺内被告「偶然です。その日は携帯の代金を支払うために博多駅に行った。店のミーティングがあったので歩いていると、川野さんと偶然出会った。自分は川野さんを傘で軽く小突いて『お前なんじゃコラ!おちょくっとるんか!』と言った。川野さんは『何が?』と言い返した」

記者「なぜ殺害した?」
寺内被告「『警察、警察』言いやがって、こっちがどんだけ辛い思いして…、周りからも『ストーカー、ストーカー』言われて。俺に謝罪もない。川野さんの態度も、ほんまにイラついてきた。それで言い合いになって。いままでのことが走馬灯のようになって、記憶、飛ぶくらいに刺した」

事件から1年5カ月。寺内被告は殺害を認めつつ、ストーカー行為は否定。裁判の大きな争点は、事件当時、寺内被告が川野さんの職場近くの路上に立ち止まり、川野さんを見つけてついて行ったことが「ストーカー行為」にあたるかどうかだ。

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