「匿名性保障せず女性と赤ちゃん救えるか」慈恵病院が“ゆりかご”巡り質問状 専門部会に猛反発 熊本

こうのとりのゆりかごを巡り「実の親が最後まで匿名を貫くのは認められない」とする報告書をまとめた熊本市の専門部会などに対し、激しく反発する熊本市西区の慈恵病院が公開質問状を出しました。

専門部会「最後まで匿名を貫くことは容認できない」

熊本市の慈恵病院が運営する「こうのとりのゆりかご」について、市の専門部会は6月5日に過去3年間の検証結果を市に提出しました。

こうのとりのゆりかご専門部会 安部計彦 部会長
「預け入れ者を匿名にすることと、子どもの出自を明らかにすることは矛盾しない」

ゆりかごに預けられた子の「出自を知る権利」と親の匿名性をどう守るかについてこのように述べ、「最後まで匿名を貫くことは容認できない」と報告書に明記しました。

慈恵病院「専門部会の方針では女性たちは応じない」

これに対し、慈恵病院の蓮田健(はすだ たけし)院長は激しく反発しました。

慈恵病院 蓮田健 院長
「現実を見ていない方々の机上の空論であると、私は思っています」

きょう(6月19日)熊本市に公開質問状を提出した蓮田院長は、報告書の内容を知った女性が匿名性の保障に不信感を抱き、ゆりかごの扉の前で混乱したケースがあったと明かしました。

蓮田院長「匿名性を保障せずに女性と赤ちゃんを救うことができるのか。専門部会の方針では女性たちは応じません」

そのため、公開質問状では改めて匿名であるべきと訴え、女性に混乱を招いた責任などについても見解を要求しました。

対立の理由とそれぞれの主張

なぜ今になって専門部会と病院で対立が起きたのでしょうか。

ゆりかごは今年で設置から17年を迎え、預けられた子どもが大きくなり、どう生まれ育ったかを知る「出自を知る権利」が課題になっていることが背景にあります。

さまざまな事情で、実の親の中には匿名でなければ預けられない人も多くいます。そこで専門部会は「最初は匿名でも、秘密を守る仕組みを作ったうえで名前を名乗れば、どちらの立場も守れる」としています。

一方、蓮田院長は「出自を知る権利」と実の親の匿名性は「どちらも大切だ」としたうえで、「最後まで匿名性を守らないと『実名を無理やり聞かれるかも』などと心配してゆりかごに来なくなり、母親や赤ちゃんの命が守られなくなるケースが出る」と反発しています。

【相談窓口一覧】

思いがけない妊娠や出産、産後の養育について悩んでいる人は、以下の窓口で相談を受け付けています。

いずれも、熊本市民でなくても相談できます。

<相談窓口>

■「にんしんSOS熊本(エスオーエス くまもと)」

080-9068-7528 24時間いつでも対応

■熊本市の「妊娠内密相談(にんしん ないみつ そうだん)センター」

096-366-3060 午前8時半~午後5時15分

メール(naimitsusoudan@city.kumamoto.lg.jp)

※夜間や休日、祝日の電話は「にんしんSOS熊本」と連携、メールは次の営業日に対応

■福田病院(ふくだ びょういん)母子サポートセンター=熊本市中央区

096-322-2995 日曜と祝日除く午前9時~午後5時半

「母子(ぼし)サポートセンターに相談(そうだん)です」と伝えてください

メール(info@fukuda-hp.or.jp)

■中高生妊娠相談(ちゅうこうせい にんしん そうだん)※18歳以下なら誰でも相談可能

・福田病院(ふくだ びょういん)=熊本市中央区

096-322-2995 日曜と祝日除く午前9時~午後5時

メール(info@fukuda-hp.or.jp)

・まつばせレディースクリニック=熊本県宇城市

0964-34-0303 日曜と祝日除く午前9時~午後5時

・菊陽(きくよう)レディースクリニック=熊本県菊陽町

096-213-5656 日曜と祝日除く午前9時~午後5時

・ソフィアレディースクリニック水道町=熊本市中央区

096-322-2996 日曜と祝日除く午前10時~午後5時

■慈恵病院(じけい びょういん)「赤ちゃんとお母さんの相談係」=熊本市中央区島崎6丁目1の27

0120-783-449 24時間いつでも対応

※慈恵病院は「こうのとりのゆりかご」と「内密出産(ないみつ しゅっさん)」に対応しています

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