全盲、乳がん、脳梗塞で半身まひ…困難続きの77歳女性、今は「車いすスポーツ」に夢中 あくなき挑戦で「輝かしい人生にしたい」

車椅子でサウンドテーブルテニスの試合に臨む渡辺極子さん=島根県出雲市今市町、サン・アビリティーズいずも

 全盲、乳がん、脳梗塞による半身まひを乗り越え、車いすスポーツに挑む女性がいる。渡辺極子さん(77)=松江市西川津町=は、5月に島根県障害者スポーツ大会に出場し、音を頼りに行う卓球「サウンドテーブルテニス」と円盤を投げる「フライングディスク」に出場した。「目が見えなくても足が動かなくてもできることはある」とあくなき挑戦を続け、自身の可能性を広げている。

 渡辺さんは20歳の頃、網膜色素変性症と診断され、30代から徐々に視力を失った。うつ病や乳がんを乗り越え、60代でマラソンをスタート。練習を重ね、フルマラソンも完走するほどになり、2021年の一畑薬師マラソンは女性最高齢の出場者として力走した。

 ランニングという生きがいを手にした22年2月、今度は脳梗塞で倒れ、左半身にまひが残った。リハビリを続け、手すりを持ちながら歩けるようになった。ただ23年12月、慣れない新居で転んで腰を打ち、車椅子生活を余儀なくされた。大好きだったランニングはおろか、一人で歩いたり着替えたりするのも困難になり心が折れそうになった。

 不自由な中、ベッドから自ら立ち上がる練習を続け、近くに置いた簡易トイレまで移動できるようになった。「できないことが増えた分、できたときの喜びもある」と気付いた。

 「今の自分がどこまでできるのか試したい」。チャレンジ精神に火が付いた時、出合ったのが視覚障害者向けのサウンドテーブルテニス。金属球が入ったピンポン球を、音を頼りに打ち合い、魅力にはまった。

 県障害者スポーツ大会では、盲学校の高校生を相手に2セットを取られたが、最終セットはジュースまで持ち込んだ。結果は0-3で敗れたものの「少しは対抗できて自信になった。出場して良かった」と笑みを浮かべる。

 投げた円盤の距離や枠への的中率を競うフライングディスクにも挑戦。正しいフォームを定着させ、水平に円盤を飛ばすのが今の目標だ。「視覚障害と身体障害の両方があるが、いろんなことに挑戦し、輝かしい人生にしたい」と意欲は尽きない。

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