交流戦でプロ1号も2軍で実戦積むことに…ソフトバンク笹川吉康が弾丸2ランなど4安打 小久保裕紀監督の〝厳命〟に「打って待つしか」

3回2死二塁、先制の右越え2ランを放つ笹川(撮影・永田浩)

◆ウエスタン・阪神6―6ソフトバンク(19日、鳴尾浜)

ソフトバンク・笹川吉康外野手(22)が豪快な一発で、1軍復帰へ向けての〝再出発〟を誓った。「3番・右翼」でスタメン出場すると、3回に3号2ランを右翼席へ、6回にも右中間突破の適時三塁打を放つなど、4安打3打点をマークした。

主砲・柳田悠岐外野手(35)の戦線離脱もあって交流戦中に1軍デビューを果たした若武者は、プロ初安打、初本塁打を記録し、お立ち台にも立つ、センセーショナルな活躍を見せたが、出場機会を確保して、さらなる成長を促すというチーム方針に基づき、この日からファームに合流。2軍降格にあたって、小久保裕紀監督から「3割を打て」と〝厳命〟されたことを明かし「結果を出さないと上がれない。ここで3割を打って、待つしかないです」。その固い決意を、早くもそのバットで示した形だ。

柳田がルーキーイヤーの2011年から4年間つけていた背番号「44」を受け継いだ4年目の22歳は、15日の阪神との交流戦でプロ初アーチ。みずほペイペイドームの右翼席へ豪快にたたき込んだ一撃は、かねてから『ギータ2世』と呼ばれ続けてきたその潜在能力が目覚め始めたという、まさしく〝胎動〟を告げるものでもあった。だからこそ、もっとスケールの大きい選手へと育てたい。出場機会を確保し、さらにステップアップさせるために、リーグ戦再開を前に再び笹川はファームへと戻ってきた。

ただ、1軍を経験し、確かな結果を残してきたという、その自信ゆえだろう。「緊張感とかは、全然違いますね。いい意味で打ちやすいというんですか」という笹川の言葉には、どこか余裕が感じられ、かつ、この現状に満足していないという、その貪欲さにあふれていた。「カウントが追い込まれたら厳しくなってくるんで、もうファーストストライクから積極的に打ちに行こうと思っていました」と、1回の遊撃内野安打はカウント3―1から、4回の中前打も初球、6回の右中間三塁打も2球目と、ストライクならガンガン振って出てのフルスイング。その力強さに、成長した技術が加わっての3号2ランは3回。阪神・マルティネスの3球目、131キロのチェンジアップが小さく沈んだタイミングで、両膝をすっと折り、鮮やかにすくい上げると、打球は弾丸ライナーで右翼席へ一直線に飛び込んでいった。

「今まで、真っすぐ待ちで変化球に対応するという打ち方を研究してきているんで、きょうは良かったですよね」

二塁打が出ればサイクルという1試合4安打の大暴れ。それを「格の違い」と表現するのは、少し気が早いだろうか? それでも、1軍の舞台を経験し、結果も残したという手応えは大きいだろう。松山秀明2軍監督も「1軍でヒット打って、ホームランを打って、マイナスはないでしょう。自信というか、スキルが上がっていくというか、経験値が上がっていくということなんです」と、その〝効果〟の大きさを語る。

ただ、プロの先輩として、こうも続けた。

「だからといって、急にボーンと行ければいいけど、みんなが〝そこ〟で苦労するんです。最初はそうなるんです。みんな、そこからもう一つ上へどうやって上げていくか。今の段階では、それを続けていくということが難しいんです。瞬間的には爆発できるんですけど、そこから継続して成績を残していく。それがホントに、プロ野球では難しい。笹川も、やっと、ここからがスタートなんです」

だからこそ、もう一度、ファームで泥と汗にまみれる。スターへの、主力への関門をぶち破る、本当の力をつけるためだ。今回、1軍昇格した際、小久保監督から「あそこの左ピッチャーの変化球、フェンス直撃になった当たりは良かったな」と、ファームでの打席ごとの分析や印象を告げられたことに、笹川は驚いたのだという。「すごく細かい打席まで見てらっしゃったんです。全員の全打席を見ているそうです。すごいですよ。それを知っているんで、結果というか、集中していこうというふうに思っています。ちゃんと見てくれているんだ、と」

打って、打って、打ちまくる。ファームで圧倒的な成績を残して、1軍へ必ず戻ってみせる。その誓いともいえる、いきなりの4安打。『ギータ2世』は、もう、でっかく羽ばたく準備ができている。

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