【自治体か施工業者か】『屋根落下事故』責任の所在は? 「損害賠償を求める方針」の熊本市に対し業者は「市の責任」を主張 市議会で説明へ

JR上熊本駅の屋根の一部が落下した事故についてです。熊本市は施工業者の工事に不備があったと主張し、施工業者は「市が対策を放置していた」と主張しています。果たして責任はどこにあるのでしょうか。

去年7月、JR鹿児島線の上熊本駅で歩行者通路の屋根の一部が落下しました。

屋根を管理する熊本市は、業者側の工事に不備があったと訴え、担当した2社に損害賠償を求める方針を示しています。

一方、施工業者は熊本市の責任を主張します。

施工業者 太陽土木の社長「落下する可能性があるということは、業者側も再三、市に申し入れていた。市の方が見過ごしていた、放置していた」

5年前の書類には「屋根に不具合」

熊本市と施工業者が5年前に交わした確認書には、屋根に不具合があるため、市と業者で原因を究明し補修に取り組むことが記されていました。

施工業者によりますと、雨漏り対策の工事をすることを決め、市からの最終的な着工許可を待っていましたが、その後、市の担当課が代わり改修工事が進まなくなったということです。

施工業者 太陽土木の社長「われわれは今まで対策について協議してきていますよと話したけど、(市は)引き継ぎ資料を持っていなかった」

業者側はそれ以降、何度も屋根の安全対策を提案しましたが、市からは「確認します」という回答が続いたと訴え、憤りを感じています。

施工業者 太陽土木の社長「われわれは誠実に対応してきていたのに、いざ屋根が落下する事故が起きたときに業者のせいにするのはやっぱりおかしい」

熊本市「原因が判明せず対応できなかった」

きょう(19日)の熊本市議会でも、市の対応について委員から質問が相次ぎました。

紫垣正仁 委員「(屋根が)落ちるときまで結果的に何もしなかった」
上野美恵子 委員「安全対策を先にしなかった市の対応は考えないといけない」

これに対し市は、雨漏りの調査は続けていたが、その最中に事故が発生したといいます。

熊本市 道路整備課 永田大治 課長「なかなか抜本的に『これだ』という部分の(雨漏りの)原因が判明しなかったということから、なかなか対応できなかった」

対応が不十分だったことは認めましたが、具体的ないきさつの説明はなく、委員会は中断。議論はあす(20日)に持ち越しとなりました。

業者側の訴えと熊本市の訴え

上熊本駅の屋根は2016年3月に完成しました。4月には熊本地震が発生し、5月に雨漏りするようになりました。

その後、対策をするも、根本的には改善されない状況が続きました。

今回、業者側が問題視しているのは、熊本市と業者で屋根の補修に取り組むとした2019年の確認書です。

キャスター「業者側の訴えでは、改修工事をしようとしたのに市の着工許可が出なかったと言っているわけですね」

業者は雨漏りの状況が悪化したため応急処置を提案しましたが、市の着工許可はずっと出なかったということです。

そして状況が悪化する中で、市の担当課が変わったことも影響したのか、さらに放置され続けたということです。

この確認書がありながらなぜ、熊本市が業者側の工事に問題があったとして提訴する方針を示したのか。20日の市議会で説明される見込みです。

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