ダム緊急放流による水害から1年 情報伝達など対策の現状は

去年の梅雨時期に富山県内を襲った豪雨で、県が管理するダムが緊急放流を行ったあと、下流域で浸水被害が広がりました。住民などへの情報伝達が課題となったなか、対策はどこまで進んだのか、岡田記者のリポートです。

去年6月と7月に県内を襲った記録的大雨で、県は立山町の白岩川ダムと砺波市の和田川ダムで緊急放流を行いました。下流域では浸水被害が広がりました。

岡田亮平記者「白岩地区です。大雨被害から1年が経とうとしている今もなお、災害の跡が見受けられます」

白岩地区 山田良秋区長「全部水浸しだったんですから。そういうような状態で、ダムの警報鳴らされたと思うんですよ、緊急放流の。その時に緊急放流が同時みたいな形だったんで。そこの近辺のおうちの方高齢者なものですから、4、5軒駆けずり回っていたんです」

「農作業所があったんです、あれが…」

白岩地区防災対策本部 岩本哲雄本部長「崩壊やちゃね、完全に。鉄骨の建物だったんだけれども崩壊したなって。濁流で」

町の姿を大きく変えた大雨災害。課題となったのは住民への情報提供が緊急放流とほぼ同時だったことでした。

今年5月に県と立山町が実施した合同訓練。梅雨入り前として初めて、住民に対する情報発信の手順を確認しました。

また、県は新たに河川やダムの貯水位が一定の水位を超えた場合に、緊急メールで住民に情報提供する運用を6月21日から行います。

一方、専門家は、仕組みを作るだけでなくどう運用していくか、今後が重要と指摘します。

中央大学 手計太一教授「見ていただいて、例えば見にくいとかわかりにくいといったものは、やはり県民の皆様からのフィードバックがすごく重要だと思いますので、ご協力は必須だと思います」

また、県は水害が起こりやすい出水期のダムの水位も見直しました。

もともとダムの水位は、予想雨量が基準を超えた場合、事前に下げることになっていますが、去年の大雨では短時間に降ったため、事前に下げることができませんでした。

そこで今年初めて、白岩川と和田川の2つのダムで雨量基準を超える前にダムの水位を下げることとし、20日から運用します。

県白岩川ダム管理事務所 宮川義充所長「予め現在の常時満水位を1メートル低下させる運用です。出水期に入りますので開始させていただきたいと思います。下流への治水安全度向上に有効だと思いますので、よろしくお願い致します」

各地で続く大雨による災害。専門家は、気象予測には限界があり、危機が迫っている場合には早めの避難が大切と指摘します。

中央大学 手計太一教授「まだまだやっぱり科学の限界というものがございますので、ピタッとですね、どこにどれぐらいの雨が降るというところまで、そこまでの情報までには至っておりませんので、早め早めの避難とかですね、そういったことを心がけていただきたいと思います」

大雨への警戒が必要なシーズンを迎え、去年被害にあった住民たちは危機感を強めています。

白岩地区 山田良秋区長「防災意識を十分にもってもらいたいなと。他人事みたいにうちは大丈夫だろうと、考えがほとんどだと思うんですよ」

白岩地区防災対策本部 岩本哲雄本部長「復興には相当時間かかるよと。だから日頃から防災と訓練は、一人暮らしが多いから、防災と訓練はしておくべきだと思うね」

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