過疎地で取り組む里山保育 保育士が意見交換【熊本】

八代市の山あいにある『あさひ森の保育園』。この保育園に、里山保育に取り組む県内各地の保育士たちが集まりました。少子化が進む中、過疎地域での課題などを考える保育士たちを取材しました。

【園児】
(何を捕まえたの?)
「カマキリ!」

カマキリなど昆虫を捕まえて遊ぶ子供たち。

【園児】
「小さいバッタ捕まえた!」
「こっちはでかいバッタだぞ」

小川では元気いっぱいに走り回って水遊びを楽しみます。

そんな微笑ましい様子に近所のおばあちゃんが花束をプレゼントしてくれました。

こちらは、八代市坂本町の山あいの小さな集落、鶴喰地区です。

この地区の『あさひ森の保育園』では、子どもたちが自然豊かな里山で四季に合わせた活動を楽しみながら、自然の大切さなどを学ぶ里山保育に取り組んでいます。

5月25日の土曜日、子どもたちがいない静かな保育園に大人たちの姿が…。

菊池市や山鹿市、多良木町にある計4つの保育園の保育士たちです。

いずれの保育園も過疎が進む地域で、里山保育に取り組んでいます。

少子化などによって保育環境が変化する中、課題を共有しようと、定期的に集まり研修を行っています。

【あさひ森の保育園 坂本 顕真 園長】
研修会の目的について「過疎地で子どもが減少している中で経営をどうしていくかが一番の悩み」「『地域と溶け合っていかないと生き残っていけない』」「本当の保育を、この過疎地の里山保育から発信していきたい」

研修には約40人の保育士が参加。

リュックを背負って里山散歩に出発です。

研修に参加した保育士、宮崎 奈美さんは山鹿市鹿北町にあるまほろば保育園で3歳から5歳児を担当しています。

里山保育に対する学びをより深めようと参加しました。

【まほろば保育園 宮崎 奈美さん】
「子供たちを見ていて、せっかく自然があるのに遊ばなくちゃもったいない。私たちがどれだけ子どもたちに遊びを提供できるか、地域を大事にすることの大切さを保育で経験させてあげたい」

普段、子供たちが通るあぜ道や小川など散歩コースを回りながら、それぞれの保育園の取り組みや現状、課題について意見を交わします。

【保育士たちのやりとり】
「(菊池市旭志にある)北合志保育園の周辺は人が住んでいない家が多くなっているので…。(こちらでは)家の中から出てきてくれるので安心感がある」

【まほろば保育園 宮崎 奈美さん】
「(保育園は近くに)国道3号線が通っているので、それが一番、こちらとは違う。ないなら、子供たちもスッと通れるけど…」

そして、子供たちが散歩の途中で立ち寄る『行きつけのご近所さん宅』を訪問。

いつも子供たちにお菓子をくれるというこの家のおばあちゃんが自家製の漬物をごちそうしてくれました。

あさひ森の保育園と「ご近所さん」の関係性について研修に参加した専門家は、「集落全体が「屋根のない保育園」」と話します。

【熊本学園大学 宮里 六郎 名誉教授】
「保育者だけで子どもを育てるのではなく、地域の人の力を借りて子どもを育てていく。そうすると子供も幸せそうだし、地域の人も元気になっていく。(保育者は)肩に力を入れなくって自然体で保育ができるようになる」

里山の自然の中で子供たちを地域で育てる『保育のあるべき姿』に触れた研修会。

参加した保育士にとって大きな学びの場となりました。

【黒肥地保育園保育士・山口裕美さん】
「少子化で子どもがどんどん減っているけども、その分、地域とのつながりを深めたり、子どもたちが大人になる成長段階を見据えながら育てていきたい」

【まほろば保育園 宮崎 奈美さん】
「あさひ森の先生たちを見ていて、図々しいというか近所に出向くのも私なりに頑張っていたけどその上をいかれていて、今日学んだことを自分の園でどう生かしていくか楽しみになった」

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