「我々は江戸時代の農民よりも重い年貢を払っている…」若者が“投資を選択しない未来はあり得ない“という日本の現実

「お金」は未来をつくる上で切っても切り離せない重要な役割を果たしている。

一方で、将来や未来に不安を覚える要素の一つが「お金」でもある。

日本初の独立系直販投資信託会社「さわかみ投信」の取締役・熊谷幹樹さんの著書『格差社会を生き抜く投資の哲学 君の未来とお金の関係』(幻冬舎)は、若者向けの人生指南書。

本著は熊谷さんの半生を振り返りつつ、次世代を担う若者が希望を持てるような内容になっている。

その上で、なぜ今の若者に「投資をしない未来はもうあり得ない」のかを説いている。その理由と背景について一部抜粋・再編集して紹介する。

投資をしない未来はあり得ない理由

一つの現実を伝えたい。「投資」、すなわちお金に働いてもらうこと、それによって財産形成を目指していく行為が、これからの日本人にとって不可欠になっていくことは間違いないという事実だ。

財産形成を目指すための身近な投資機会もさまざまに存在する。

みずから選んだ個別株に投資する株式投資から始まって、プロに売買と運用を任せる投資信託、さらには不動産投資や金投資などさまざまあるが、私としては君たちのような学生や若手ビジネスパーソンの諸君には「投資信託」、それも株式投資を中心にした投資信託を勧めたいと思っている。

なぜ投資をしない未来はあり得ないのかと問われれば、1つは、日本はもう「成長の約束」がない国であるということ。

2つ目として、超高齢化の中、さまざまな社会保障費の増大が避けられないという現実があるからだ。

高齢化、人口減少、そして…

かつて、この日本という国には、長期にわたって世界がうらやむ経済成長を謳歌(おうか)した時代があった。「高齢化」どころか、国民はこぞって若かった。

皆、懸命になって働き、皆旺盛に消費していた。

国そのものもまた、わが世の春を謳歌(おうか)していた。経済成長とともに国民の収入は増加するばかり。

だが、そういった時代は終わり、今では逆回転の時代に。国民は高齢化し、人口も減少へ。かつてのような国全体の経済成長がなくなれば、毎年の収入の増加にも保証はない。

かつては国全体の経済成長が強い追い風として懐を潤してくれたが、その追い風も今はない。これからは自分で未来を切り開いていかなければならない。

そしてもう一つの点は、社会保障費の増大である。

すでに就職し、ビジネスパーソンである諸君の中には、初めての給料日に振り込み明細を見、額面23万円のはずの給料が、社会保険料や税金を引かれたことで18万円程度になってしまっているのにびっくりした人もいたことだろう。

この社会保険料は、今後ますます跳ね上がっていくことになる。

ちなみに財務省の統計によれば、2023年時点、国民全体の所得に占める税金や社会保障費の割合は46.8%。所得のおよそ半分が、税金および社会保障費として徴収されている計算だ。

江戸時代の農民よりも重い年貢?

中学時代、歴史の授業で「四公六民」という言葉を聞いたことがあるだろう。

江戸時代の税率を示した言葉で、「年貢として4割を藩へ納め、6割を農民の収入とする」という意味だが、支払いを免れない社会保険料を税とみれば、われわれは江戸時代の農民よりも重い年貢を背負わされていることになる。

この社会保障費の割合は右肩上がりに増加していて、1999年度(平成11年度)に35.4%だったものが20年後の2019年度(令和元年度)には44.3%と9%近くアップ。

令和に入って多少は落ち着いたものの、入った当初の2020年度(令和2年度)には47.9%と3%も増加した。

さらには今後、君たちが受け取る年金額が減ることも確実視されている。

これは日本では年金はみずから積み立てた金額を受け取るという方式でなく、現役世代の収入から受け取る方式を取っているからだ。これを「賦課方式」という。

かつてのように、人口動態がピラミッド型を描いていたうちは、賦課方式は確かに理にかなった年金のあり方だった。

だが、現在のような逆ピラミッド型の人口動態では、現役世代の負担は増す一方となる。

だから、お金に働いてもらう

そして現役世代の負担増加にも限界がある。となれば、年金受け取り世代の受給額の削減は避けられない。

その一方、頼りの金融機関といえば、現在、銀行の定期預金の金利はわずか0.002%(2024年3月時点)。

確かに昨今、金利が上がり始めてはいるが、それでも0.07%といったところで、これは1年間100万円預けた場合の受け取り利息が20円だったものが、700円になったに過ぎない。

まあ確かに、駄菓子屋でフィリックスガム2つ買うのがせいぜいだった利息が松屋でみそ汁付きの「ネギとろろ牛めし」の並盛りを食べても、70円のおつりがくるほどになったとはいえるだろうが。

つまりは日本人がもしも将来金銭的な不安や制約から解放され、必要なもの、好きなものを購入し豊かに暮らしたいと思ったら、これまでのような勤労収入や、引退後の年金だけに依存することは構造的に難しくなる。だからこそ「お金に働いてもらう」。

投資を選択しない未来はもうあり得ない。

そしてその必要性は、われわれよりもずっと厳しい時代を生き抜かなければならない君たち若者世代にとって、より切実になるはずなのだ。

熊谷幹樹
2001年、日本初の独立系投資信託会社であるさわかみ投信株式会社に入社。アナリスト・ファンドマネージャーを経て取締役運用調査部長に就任し、現在同社の戦略立案実行部門を主導。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA®)

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