クマ、イノシシ駆除...足りぬハンター 高齢化で減少、狩猟離れ

自宅で狩猟用具を点検する大竹さん。「有害鳥獣の利活用が狩猟者確保につながる」と話す

 クマやイノシシなどの鳥獣被害が相次ぐ中、駆除に当たるハンターのなり手不足が県内でも深刻化している。2023年度の本県の登録狩猟者数は4071人で、約40年前と比べて8割減少。国が4月に捕獲などを支援する「指定管理鳥獣」にクマを追加したことで必要性がさらに高まる可能性がある。狩猟者不足の現状に、被害の多い自治体や地域住民は危機感を募らせる。

 「有害鳥獣の捕獲する必要は高まっているが、高齢化で狩猟者は減ってしまっている」。県猟友会南会津支部で事務局長を務める大竹洋一さん(69)=南会津町=は現状を嘆く。大竹さんは狩猟歴約40年のベテラン。ハンター仲間が減っていく状況をつぶさに見てきた。南会津郡4町村の支部メンバーは現在、約130人いるが、実際に狩猟しているのは約半数。700人ほどが所属していた全盛期からの落ち込みは激しい。

 1980年度に1万9384人いた狩猟者は95年度には1万人を割り込み、近年は4000人前後まで減少している。

 報酬の少なさ一因

 大竹さんによると狩猟を農業者が「農閑期の趣味」としていたような時代もあったが、近年は農産物を守るために有害鳥獣駆除の役割を求められ、狩猟者1人当たりの負担は増している。捕獲頭数ごとに行政から報酬は得られるものの、生計を立てられるほどではなく狩猟離れにつながっているとみられる。大竹さんは「わなの費用なども考えると、狩猟の報酬だけで食べていくのは厳しい。鳥獣駆除は、狩猟者のボランティア精神で成り立っている部分はある」と指摘。「報酬の増加や有害鳥獣を有効活用して利益が得られる仕組みがあれば、狩猟者の将来的な確保につながるはず」と語る。

 進む高齢化も課題

 イノシシによる作物被害が数多く報告される白河市でも、後継者の育成は喫緊の課題だ。市鳥獣被害対策協議会に所属する狩猟者46人の平均年齢は69.3歳。若い世代の加入を進めようと、市は独自に狩猟免許を取得する際の補助事業などを打ち出している。

 同協議会のメンバーで、地域で鳥獣駆除を担うハンターの佐藤良夫さん(73)は「ハンターの仕事は命懸け。われわれ世代がいなくなったら、地域の害獣駆除はどうなってしまうんだろう」と今後の不安を口にする。

 県をはじめとする各自治体は、狩猟者不足を解消しようと動いている。県は今年夏ごろ、リーダー育成のため「ハンタースクール」を開講する。また本年度から、狩猟者を補助する人材育成を目的に、農業従事者向けの研修も始める。設置したわなを見回り、餌を交換するなどの作業をしてもらう予定だという。県の担当者は「関心のある方は、セミナーなどに参加してほしい」と呼びかけている。

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