「いいね」もフォロワーもなし、安心して使えるSNSを目指す「Maven」

SNSがネガティブで、攻撃的で、ストレスを感じさせるコンテンツであふれているのは周知の事実だ。あたかもサイトの機能がそれを助長しており、それによってユーザーが危害を受けているようにも見える。シリコンバレーの大物たちが支援しているある新しいSNSは、その状況を変えることを目指している。

2024年の初め頃に立ち上げられた新しいSNSである「Maven」は、まだ徐々に普及し始めた段階だ。このプラットフォームからは、「いいね」や、フォロワー数や、注目を集めている挑発的なコンテンツをおすすめするアルゴリズムが意図的に排除されており、その代わりに、人工知能(AI)を使ってユーザーが本当に求めているもの提供しようとしている。

例えばMavenでは、ユーザーが自分が関心がある話題を投稿すると、AIがそれを分析してタグ付けを行い、その内容をその人のフォロワーではなく(Mavenにフォロワーの仕組みは存在しない)、その話題に関心を示したユーザーのコミュニティに提供する。ユーザーはそこから、自分の投稿に「いいね」がつくかどうかを気にすることなしに、その話題について会話することができる。

さらに、Mavenに用意されているコンテンツ発見フィルターを使えば、自分が関心を示した話題に関するコンテンツだけを見たいのか、AIがそのユーザーが好むかもしれないと判断した別の話題も表示してほしいのかを設定することもできる。また、興味のない話題を非表示にしたり、攻撃的だと感じた他のユーザーの投稿を報告したりすることも可能だ。ただし、Mavenの最高技術責任者(CTO)であるJimmy Sacretan氏は、Wiredの取材に対して、今のところMavenで攻撃的な発言が広がっている様子はないと話した。

同氏は、「なぜなら、このサイトでは単なる面白い一行コメントや叩き行為では注目を引くことができないからだ」と述べている。

とはいえ、これまで大成功を収めてきたソーシャルメディア(Facebook、Instagram、Twitter/Xなど)がそうなったのは、「いいね」を欲しがるユーザーや、明らかに非建設的な会話をしたがるユーザーからの支持を得たからだとも言える。そのため、Mavenが不安が少ないプラットフォームになったとしても、それによって状況をひっくり返し、成功を収めることができるかどうかは議論の余地がある。

ただし同社には、そのビジョンの実現を後押ししてくれる、強い影響力を持つ人々の支持がある。同社の資金調達額は明らかにされていないが、これまではTwitterの共同創業者であるEvan Williams氏が同社のリードインベスターを務めている。またMavenは、Wiredの取材に対して、OpenAIの最高経営責任者(CEO)であるSam Altman氏からも出資を受けているとも述べている。同社が事業を継続するには数カ月以内に追加資金を調達する必要があるが、シリコンバレーの有力者から支援を受けていることは資金の獲得に大きな影響を与えるだろう。

Mavenを試してみたい人は、同サービスのウェブアプリを使うか、「Google Play」ストアやAppleの「App Store」からアプリをダウンロードしてみてほしい。Mavenではまず自分が関心を持っている話題を選択し、それからコンテンツを投稿することになる。本記事の執筆時点ではユーザー数はそれほど多くはなく、議論も活発ではない。しかし、必要な資金を獲得することができ、「いいね」もフォロワーもないMavenの環境をユーザーが気に入れば、状況が大きく変わる可能性もある。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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