【6月20日付編集日記】清濁あれこれ

 芭蕉は弟子たちに「(俳諧では)濁音を清音で読んでも問題はない」と話していたらしい。それを知ってか知らずか、政界では濁点を削る動きが目立つ

 ▼きょう告示の都知事選では、このところ負け続きの自民党が、党の名を前面に出さず、別組織に参画する形で現職を支援する。自民党から濁点を取ってしまえば党派色の薄い市民党の一丁上がりというわけである

 ▼参院でようやく可決、成立と相成った改正政治資金規正法を巡っては、日本維新の会が自民党に反旗を翻した。旧文通費を巡る公党間の約束をほごにされたというのがその理由。ほこを向けられて文句は言えまい

 ▼自民党の中からは、他党の要求を次々と丸のみするリーダーに対して、身内への配慮に欠けるとの不満が噴出。外からも内からも批判を浴びるのに疲れたか。党総裁の任期切れを待たずして、レームダック(死に体のアヒル)の気配が漂う

 ▼次のリーダー候補の名が飛び交うものの、現リーダーは当然聞かざるの構え。今後の焦点は、首相が大好きなサプライズを繰り出すことなく、ザルともいわれる改正法を置き土産に、そのまま去るのかどうか。それで濁りが澄むならば、どちらに転んでも問題ないのだが。

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