今年の“3億円大会”は…し烈な伸ばしあいに? 止まるグリーンには正攻法が重要【大西翔太のSHOWTIME】

小祝さくら(左上)、原英莉花(右上)、宮田成華(左下)、河本結(右下)(撮影:上山敬太、米山聡明)

<アース・モンダミンカップ 事前情報◇19日◇カメリアヒルズカントリークラブ(千葉県)◇6688ヤード・パー72>

今週で国内女子ツアーは第17戦。第1回リランキングも終わり、中盤戦に差し掛かる。そしてなんといっても今大会は賞金総額3億円(優勝5400万円)のビッグトーナメントという部分でも注目を集める。さて、その展望はどうなるのか? 青木瀬令奈のコーチ兼キャディを務める大西翔太氏が展望を読む。

■今年はバーディ合戦になる予感…その根拠は?

今年のコースには、これまでと違うポイントが。まずパー4の17番はティイングエリアが大きく後方になり、昨年までの347ヤードから410ヤードにアップ。63ヤードも伸びると、大きく攻め方も変わってくる。「今まではセカンドでピッチングウェッジが握れたけど、今年は6、7、8番アイアンとかになりそうです」。ティからの景色も変わり、“心機一転”で立ち向かう必要がある。また18番パー5もグリーン奥が強い下り傾斜になり、ここに外すと、状況次第では寄せるのも困難といえそうだ。

近年の優勝スコアを見ると、2021年の菊地絵理香は20アンダー、22年の木村彩子が4アンダー、そして昨年の申ジエ(韓国)が13アンダーと、年によってばらつきがある。そんななか大西氏は、今年は「伸ばしあい」と読む。その根拠になるのがグリーンだ。

「現状でグリーンは硬くないし、スピードも出ていない。どう変わるか分からないですが、練習ラウンドではみんな“重い”と口をそろえています。ティショットをフェアウェイにさえ置けばチャンスにつけられますね」

ラフは部分的に長い箇所があるため、そこは要注意。運が悪いと、まったく狙えないというライも想定できる。それゆえ“フェアウェイキープ”と“マネジメント”が大事になってくるが、それでも軟らかいグリーンコンディションを加味すると、優勝ラインは「一日5(アンダー)ずつの20(アンダー)くらいになりそうです」と大西氏は占っている。

■アイアン変更がハマる原英莉花から上位進出の予感が

ただ、大西氏は「調子が悪くてもスコアを作れるコースもあるけど、ここはそうではありません。フェアウェイからでないとチャンスが作れません。“ラッキー”はありません」とも話す。正攻法が求められるゆえ、ごまかしはきかず、状態のよさがそのままスコアにあらわれるとみている。では、どのような選手が、このコースに合っているのか?

まず最初に名前が挙がったのは小祝さくら。日本ツアーの直近5試合で4度のトップ10入りを果たし、先週も優勝争いのすえ2位になっている。こちらもトップ10を射止めた(9位)3週前の「全米女子オープン」以降も、疲れを見せない。大西氏も、「いつ勝ってもおかしくない。パターの転がりすごくいいし、ショットもパットも重い球を打っています。飛んで曲がらないし、決め打ちでパットを沈められる。ノリにノッていると感じます」と、今季2勝目は近いと感じている。

さらに原英莉花の名前も口にする。メジャー3勝と大舞台での勝負強さは折り紙つき。さらにこんな情報も。「アイアンをタイトリストのものに替えてから、練習場でもいいショットを打っていますね。新しいギアがハマっている感じがします。球筋もよくなってます。このビッグトーナメントを大きなターニングポイントにしても不思議ではありません」。思うように進んでいないシーズンだが、コースではその状態が上がりつつあることも確認できる。

また河本結、そして宮田成華からも勢いが伝わってくるという。「河本さんは、リランキングも1位でしたし、勝つ準備ができていますね。精神、肉体、技術の状態で3拍子そろってます。パワーフェードを駆使しますが、全体のフェードのクオリティがさらに上がっている。“笑顔の河本結”が帰ってきました。宮田さんも、ショットの技術が大きく上がっています。初優勝が待たれる選手のひとりですし、あとはパターが入れば…という状態です。チャンスをこういうところで作ってくるのでは?と肌で感じます」。

今週は海外メジャー「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」があり、女王の山下美夢有や明愛・千怜の岩井姉妹、そして今季3勝の竹田麗央という実力者たちが海を渡っている。“優勝候補”の大量離脱は、同時に多くの選手にチャンスを生むことにもなる。「こういうビッグトーナメントで状態を上げられるのが真の実力者。出場選手も多いし、誰にでもチャンスはあります。海外勢がいないところをアドバンテージに感じてもらいたいですね」。5400万円を争う勝負が、いよいよ開幕する。

解説・大西翔太(おおにし・しょうた)/1992年6月20日生まれ。名門・水城高校ゴルフ部出身。2015年より青木瀬令奈のキャディ兼コーチを務める。16年にはキャディを務める傍らPGAティーチングプロ会員の資格を取得した。ゴルフをメジャースポーツにと日夜情熱を燃やしている。21年には澁澤莉絵留ともコーチ契約を結んだ。プロゴルファーの大西葵は実の妹。YouTube『大西翔太GOLF TV』も好評で、著書『軽く振ってきれいに飛ばす!! 飛距離アップの正解』が発売中。

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