長崎・雲仙の旅館で改革へ スリランカ出身の総支配人補佐 高級ホテルで実績「日本らしさ感じて」

ロビーのドアを開けて離れへ通じる日本庭園を案内するジャヤスリヤさん=雲仙市、半水盧

 長崎県雲仙市小浜町雲仙の旅亭半水盧の総支配人補佐に、スリランカ人のアミラ・ジャヤスリヤさん(40)が就任した。来日して約20年。高級ホテル「アマン東京」(東京)のスーパーバイザーや、リゾートホテル「アマネム」(三重県志摩市)の部長職などを歴任。流ちょうな日本語で「外資系ホテルと旅館のマリアージュ(融合)を」と意欲を語っている。
 21歳で東京の日本語学校に進学した。「なぜ日本は第2次大戦後にこれほど復興できたのか」と興味を抱いていた。上手に話せなくても働きやすいという理由から、飲食店やホテルのレストランで皿洗いを始めた。厳しい指導を受けたが、「日本人が話すような日本語を習得して、いつか指導する立場になる」と決めた。
 日本語学校を卒業後、専門学校でホテル経営を学んだ。在学中、インターンシップ(就業体験)で高級ホテル「ザ・ペニンシュラ東京」に勤務。食器を洗って磨く裏方の仕事に徹した。熱心で社交的な働きぶりが認められて正社員に。初めて接客した日が忘れられない。「華やかな空間でお客さまをもてなし、笑顔になってもらう。映画の中に立ったようだった」
 他のホテルに移りバーテンダーやレストランスタッフなど業務内容をステップアップし、「アマネム」では大勢の従業員を束ねる指導的立場になった。開業準備や年間事業の提案などを担当。勤めた8年間にコスト削減を進めた上、平均客単価を1万円引き上げた。外国人宿泊者のリピーター増加にも貢献した。

「半水盧で日本らしさを感じてもらいたい」と語るジャヤスリヤさん

 新たな可能性を求めて今年3月、ホテル運営業「温故知新」(東京)に転職。運営する高級リゾートホテル「五島リトリートray」(五島市)では、総支配人代行として「運営アドバイザー」を担った。
 4月、温故知新が半水盧の運営会社になった。「インバウンド(訪日客)需要を増加できる」と期待され、総支配人補佐に抜てきされた。5月に着任。小田俊隆総支配人は「頼りになる。コミュニケーション力があり、従業員をよくまとめてくれる」と高く評価する。
 5千坪の敷地に客室はわずか8棟14室。四季折々の樹木が彩る広大な日本庭園に離れが点在する。「トップレベルのサービスを守り、国内外の方に日本らしさを感じてもらいたい」とジャヤスリヤさん。旅館の素晴らしさを堪能できるプランを構築中だ。一方で、業務効率化や人手不足解消も課題。ITでの業務管理を進めるという。
 妻や子どもたちを三重県に残し、雲仙温泉街で暮らす。「改革できるまで、雲仙の大好きな仲間とともに頑張る」。湯けむり立ち上るまちで、そう誓った。

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