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漫画やアニメには、その美貌で周りを翻弄する“魔性の女”キャラが登場する。彼女たちは外見的に美しいというだけではなく、才能に溢れ、精神的に強く、その自信ある姿に男性はもちろん、女性の読者や視聴者も魅了される。
その一方、スペシャルやシリアス回などで、いつもとは違う意外な姿を見せる彼女たち。その意外な一面にドキッとさせられた経験がある人は少なくないだろう。
そこで今回は、“魔性の女”キャラが必死な表情を見せた「ギャップ」シーンを紹介していく。
■『名探偵コナン』蘭への想いと任務で揺れ動くベルモット
まずは青山剛昌さんの『名探偵コナン』から。本作の“魔性の女”と言えば、“黒ずくめの組織”の女性幹部・ベルモットが有名だろう。
ベルモットは、プラチナブロンドのロングヘアをした美女だ。情報収集や攪乱工作に優れており銃の腕もピカイチ。さらには“千の顔を持つ魔女”の異名を持ち、作中ではその変装能力でコナンのみならず多くの読者をも混乱させ続けている。
また、江戸川コナン=工藤新一だと知る限られた人物の一人で、“黒ずくめの組織”のメンバーであるにもかかわらず、コナンを“シルバーブレット”と呼び、手助けするような行動もとる非常にミステリアスな女性だ。
そんな“魔性の女”キャラであるベルモットが、必死な表情のギャップシーンを見せたのは、アニメ第345話「黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー」のことだった。
この回では前半、“季節外れのハロウィンパーティー”で起きた殺人事件、後半は埠頭でのコナンとベルモットとの直接対決が描かれるテレビスペシャルであった。
スナイパー・カルバドスの照準に隠れるようにベルモットと対峙するコナン。しかし、そこに灰原哀が姿を現してしまう。さらには、その灰原を助けようと身を潜めていた毛利蘭も車のトランクから飛び出し、一気に現場は混乱状態となった。
カルバドスから何発も射撃されるなか、灰原に駆け寄った蘭は、彼女に覆いかぶさり身を挺して守ろうとする。ベルモットも何度も威嚇射撃をし、蘭を灰原から離れさせようとするが、蘭はまったく動かなかった。
過去に命を救われたことから蘭を傷つけたくないという想いと、組織の一員としての任務との間で揺れ動くベルモット。「MOVE IT ANGEL!(どいてエンジェル!)」と懇願するように叫ぶ姿は普段の余裕たっぷりの彼女ではなく、その必死な表情にドキリとしてしまった人は多いだろう。
■『シティーハンター』想いを寄せていた男性の死に…野上冴子
北条司さんの『シティーハンター』。主人公である凄腕のスイーパー・冴羽獠は美女に目がないため、本作では“魔性の女”キャラも多く登場した。なかでも、野上冴子はサブレギュラーとして登場する本作きっての“魔性の女”キャラだ。
冴子は“警視庁の女狐”と呼ばれる妖艶な美人刑事だ。「自分より弱い男には興味がない」と豪語するほど自らも腕が立ち、作中では服の下に隠している投げナイフを自在に操る。獠とも長い付き合いのようで「もっこりの貸し」をいいことにこき使っているのも印象的だ。
そんな冴子だが、『シティーハンター’91』第11話「傷だらけのトリガー! 冴子が愛した刑事」では少し違った一面を見せている。この回は、かつて冴子が思いを寄せていた刑事・朝倉が登場する回であった。
現在、インターポールに所属する朝倉は、妻子を殺した台湾マフィアのボスを追いかけ日本に帰ってくる。しかし、その身は病に侵され、特攻するようにボスのもとへ向かうが返り討ちに合ってしまい殉職してしまうのだ。
クライマックスでは、獠と冴子が朝倉の無念を晴らすべくアジトへ乗り込みマフィアを壊滅状態に追い込む。ボスはヘリに乗り逃走するのだが、その前に現れた冴子。最後の悪あがきとしてガトリングガンで対抗してくるボスを、得意の投げナイフで仕留めるのであった。
しかし今回ばかりは相当応えたのだろう。普段はのらりくらりと獠をかわして去っていく冴子だが、今回は「獠頼みがあるの ハンカチを忘れちゃった あなたの胸で泣かせてくれる?」と言って、獠を頼って泣く姿があった。普段の彼女からは想像できない一面に、さすがの獠もおふざけは封印していたようだ。
■『ルパン三世』記憶をなくした峰不二子
最後はモンキー・パンチさんの『ルパン三世』から、“魔性の女”キャラの代表格である峰不二子のギャップシーンを紹介したい。
不二子はルパン一味の紅一点で、誰もが見とれるグラマーな美女だ。自分の欲望に忠実であり、目的のためなら仲間をも躊躇なく裏切るところも彼女の魅力であろう。
長らく峰不二子の声を担当し、5月20日に亡くなられた増山江威子さんも、かつて特集記事のなかで「男性への甘えは女性なら誰でも出来るが、不二子は甘えながらもルパンにすべてを委ねることはしない女性」と、不二子を甘えの中に冷めた部分がある女性だと評していた。
そんな不二子だが、彼女の意外すぎるギャップを見ることができる作品がある。それが、1999年『金曜特別ロードショー』で放送された『ルパン三世 愛のダ・カーポ ~FUJIKO’s Unlucky Days~』だ。
伝説のお宝“コロンブスの卵”を巡ってさまざまなアクションやミステリーが展開される本作だが、最大の特徴は、敵の襲撃を受けた不二子が記憶喪失となってしまうことだろう。
記憶をなくした不二子は別人のようにひどく怯え、敵にも簡単に捕まってしまうほど弱々しかった。とくに、ルパンのことを「ルパンさん」と呼んでいたのが、本作の不二子を象徴していたように思う。
そしてクライマックスでは、嵐が吹き荒れるなか、飛行機から吹き飛ばされそうな不二子にルパンが「お前に愛してるって言わせるまで 守ると約束したはずだぜ俺は! 俺の名を呼べ! 不二子」と叫ぶのだ。過去のさまざまな思い出や感情が駆け巡った不二子は、ルパンの腕を掴む。すると同時に記憶が戻ったのだった。
いつもは互いに騙し合いを繰り広げている二人にとって、意外なシリアス展開であるこのシーン。しかし同時に、互いの信頼関係が垣間見れた名シーンでもあった。
ちなみにエンディングでは「オレの宝はお前だけさ」と言うルパンに対し、すかさず「そういう冗談は聞き飽きたわよ」と返す不二子。いつもの二人に無事戻っており、ちょっとほっとした気持ちになった。
今回は、漫画・アニメの“魔性の女”キャラが必死な表情を見せた「ギャップ」シーンを紹介してきた。そこには彼女たちのいつになく必死な姿があり、意外な一面を見れたようでドキッとさせられてしまう。
また、その必死な姿はただの弱さや脆さとしてではなく、人間的な魅力として描かれていたように感じ、ますます彼女たちの虜となってしまった筆者だった。