入試女子枠の功罪を考える 森永卓郎氏「異常な仕組みを一日も早く廃止できるように努力すべき」

文部科学省

国立大学の4割が入試に女子枠を設定済み、あるいは設定予定であることが、朝日新聞の調査で分かった。検討中のところを加えると、過半数の国立大に導入される可能性がある。いくら旗を振っても、理系を中心に女子の比率が高まらないことに業を煮やした形だ。

正直言って、私はこうした割り当て制に反対だ。それは、優秀な男子を排除する逆差別につながりかねないからだ。ただ、国立大の設定する女子枠については、必要悪として認めるべきだと思う。そうした強硬手段に出ないと、いつまで経っても世の中が変わらないからだ。

私が獨協大学で自分のゼミを持ってから19年が経つ。ゼミ生の選考は、論文の審査で決めているのだが、その際、性別は一切考慮していない。それどころか、応募書類に性別の記載はないから、そもそも性別は分からないのだ。問題は、学生の互選で選ぶゼミ長だ。ゼミを開設して7~8年経ったところで、私は異常に気付いた。選ばれたゼミ長がすべて男性だったのだ。私は、学生たちに性別を意識することなく、人物本位で投票するように毎年呼びかけたが、事態は改善しなかった。女子学生が決選投票まで行ったことは何度かあったが、最後に選ばれるのは、いつも男子学生だったのだ。それでも私は女子への投票に下駄をはかせるようなことは一切しなかった。そのなかでも、一昨年、ついに変化が生まれた。17期のゼミ長に女子学生が選ばれたのだ。そして昨年、18期のゼミ長も女子学生が選ばれた。いずれも圧勝だった。

2人の女子のゼミ長は、リーダーシップがあり、ゼミ生の人間関係やゼミの活動にも細かい配慮をしてくれるので、いま私のゼミは、創設以来の順風満帆の状況にある。特に私が癌に罹患して以降、私自身の指導が行き届かない部分がどうしても出てきてしまうのだが、それを埋め合わせて余りあるほど、2人のゼミ長は大活躍をしている。それは、彼女たちが「女子」だからではない。あくまでも、人物として抜き出ていて、他のゼミ生もそのことが分かっているからこそ、圧倒的な支持を与えているのだ。

女子だから理系科目に弱いという事実はまったくない。理系を志望する女子が増えなかった最大の原因は、女子が理系科目に興味を持ち、勉学を深める環境整備を怠ってきた高校までの教育の責任が大きいと私は思う。そうした努力はいまからでも遅くないから、しっかり取り組んで、女子枠という異常な仕組みを一日も早く廃止できるように努力すべきだろう。

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