初登場1位『ディア・ファミリー』はシリーズでもティーン向けでもない、久々の王道作品

6月第3週の動員ランキングでトップに立ったのは、大泉洋主演、月川翔監督の新作『ディア・ファミリー』。オープニング3日間の動員は18万5000人、興収は2億5600万円。1月の『ゴールデンカムイ』、3月の『変な家』、5月の『帰ってきた あぶない刑事』に続いて、実写日本映画が1位になるのはこれで今年4作目となる。大泉洋にとっては2014年11月公開の『トワイライト ささらさや』以来約10年ぶり(主演作では2011年9月公開の『探偵はBARにいる』以来約13年ぶり)、月川翔監督にとっては2016年2月公開の『黒崎くんの言いなりになんてならない』以来約8年ぶりの首位獲得作品に。とりわけ今作に関しては、その仕上がりの良さや、観客層の幅の広さも含め、両者にとって手応えと大きな意味のある1位となったに違いない。

月川翔は、同じ東京藝術大学大学院映像研究科出身の濱口竜介監督の卒業制作作品『PASSION』(2008年)にショックを受け、映画監督になることを断念しかけた後、「職人監督」としての自認のもとにキャリアを歩み始めた監督。ティーンムービーの担い手として頭角を現し、興収35.2億円の大ヒットとなった2017年7月公開の『君の膵臓をたべたい』以降、一躍売れっ子監督に。2018年には『となりの怪物くん』、『センセイ君主』、『響 -HIBIKI-』と半年足らずの間に、いずれも東宝配給のメジャー作品が3作品続けて公開されることとなった。

近年は、WOWOWのテレビドラマから劇場版に発展した『そして、生きる』(2019年)や、Netflix製作でグローバルヒットになった『幽☆遊☆白書』(2023年)を手がけるなど、新しい環境でのチャレンジに取り組んできた月川翔だが、そういう意味でも今作『ディア・ファミリー』は久々の王道のメジャー日本映画ということになる。

「王道のメジャー日本映画」であることを証明するように、ウィークデイには2位以下をダブルスコア以上で大きく引き離してトップを独走中の『ディア・ファミリー』。もっとも、興行全体の数字自体は芳しいものではなく、夏休み前の閑散期といったところ。実写映画に限るなら、外国映画を含めても7月12日に『キングダム 大将軍の帰還』が公開されるまで1ヶ月近く厳しい興行が続きそうだ。

(文=宇野維正)

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