パソコンから謎の警告音「あなたのコンピューターはしまい込まれた」急増する“サポート詐欺”の実態と対処法を取材

特殊詐欺の被害が一向に減っていない。詐欺にもオレオレ詐欺やSNS型の投資詐欺など様々あるが被害の実態と対策について考える。

パソコンから警告音

「セキュリティメッセージ。あなたのコンピューターはしまい込まれました。あなたのIPアドレスがあなたの知識なしで使われました」。これはあるインターネット広告をクリックすると現れる画面だ。警告音が出て操作が出来ないように見せかけてある。実は、これが近年急増しているサポート詐欺というもの。ウイルスに感染したなどと言って修理費を請求する手口なのだが、こうした身近に潜む詐欺にどう対応したらよいのか。

「とりあえず、こっち側でパソコン操作できなくなった。『アップルギフトカードを購入してきてください』と言われたので、”アップルギフトカード”が出てきた時点で間違いなく詐欺だなと」。こう話すのはスペースシステムズの田中英雄社長だ。田中社長が5月、直面した詐欺の手口が、サポート詐欺だ。一体どんな詐欺なのか。

サポート詐欺の手口

石川県警サイバー犯罪対策課の小島直樹次席によると「サポート詐欺とはインターネット閲覧中に突然、ウイルス感染したかのような偽の警告画面、警告音を発生させるなどしてユーザーに不安を煽ります。不安に陥ったユーザーが画面に表示された電話番号に電話をかけてサポート料という名目でお金を騙し取るといった手口」だそうだ。

田中社長に当時の話を聞くと、「CADソフトで図面を描いていたら、いきなり警告音とともに『パソコンを切らないでください』というパソコンの中からすごく大きい声が出て、更に0101で始まる電話番号が表示された」ということだ。けたたましい警告音と「パソコンを切らないように」という音声案内、更に電話番号が表示された。そして…「電話をかけました。日本語がそこそこ話せる外国人が出て、『今、その音切りますね』と」。

リアルな詐欺の実態

田中社長は電話でのやり取りを詳細に語る。「『あなたのパソコンにハッカーが侵入しています、侵入しようとしています。それの為の警告音です』と。『ハッカーを止めてくれ』って伝えたら『修理代金がかかります』ってことだったので、『いくら掛かるんですか?』って聞いたら、画面に表示されたのが修理代金4万円、5年保証、一生保証って書いてあったから『何だこの一生保証は?』って質問したんですよ」。

「そしたらそれに関しては『う~ん$#%&@』って曖昧な答えだったので『じゃあお金どうすればいいですか?振り込みますよ』って言ったら、『振り込みじゃなくて、アップルギフトカードで』と。その時にデスクトップにアップルギフトカードの画面が表示されて『これ分かりますか?これ買ってきてください』って言うから詐欺だわと」。

詐欺だと気付いた田中社長。幸いギフトカードなどは買わずに済んだのだが…。「後日、僕の携帯番号がバレてるから、かかってきた」。詐欺師に携帯番号を知られたことで、謎の国際電話が来るように。セキュリティソフトには入っていたのか田中社長に聞くと「入ってる入ってる。セキュリティもバンバンに入ってるから。だからいきなりビックリした」。セキュリティソフトが入っているにも関わらず、突如出現した警告画面。これは一体どういうことなのか。

被害に遭わないための対処法

パソコンに関するトラブルや相談を請け負うパソコン修理屋金沢東山店の中堀圭司店長を訪ねた。「ウイルスに感染してますよという画面が出てしまうので、それも心配でしょうけれども、実際はその画面が出たとしてもウイルスに感染している可能性は低い」と中堀店長は話す。警告画面はウイルスによるものではなく、普通のホームページと同じ仕組みで表示されているそうだ。ただ、少し厄介な部分があるようで…「警告サイトはどこかクリックすると全画面になる。音声メッセージも出ましたね。ここで×(キャンセル)を押しても…また出てきて、矢印もウインドウの外では表示されないようにプログラムされている」。

何も知らないとドキッとしてしまうこれらの手口。どう対処したら良いのだろうか。「何らかの形でホームページを閉じる。もしくはパソコンをシャットダウンあるいは再起動してしまえば、そのページは出てこない」と中堀店長は話す。最初に警告画面が出てきた時は、まだ右上に×印がある場合が多く、ここを押せば画面を閉じることができるそうだ。もし全画面になってしまった場合は、コントロールキー(ctrl)とオルトキー(alt)、更にデリートキー(delete)を同時に押せば画面が切り替わり、右下に出る電源マークでシャットダウンまたは再起動を押す、もしくは強制シャットダウンを実行すれば問題ないそうだ。

石川県警の発表によると、こういったサポート詐欺の相談件数は2020年では100件未満だったが、2023年は約3倍にあたる289件、2024年は4月末時点で84件の相談が寄せられている。身近に潜むサポート詐欺。県警はもし被害に遭った場合はすぐに相談してほしいと呼びかける。

急増するサポート詐欺

田中社長によると、電話を実際にかけるとパソコン画面上に偽のオペレーターの顔写真が現れて自己紹介するそうだ。それから色々な説明があり、慌てているとつい信じ込んでしまう。しかし、こうした人物は実際にはいない。パソコン修理の中堀店長はここ数年で相談件数が増え、中には何度もギフトカードを購入してしまった人もいたということだ。

石川県警によると、2024年の実際の被害件数は4月末時点で3件、被害総額は約232万円。また、このサポート詐欺はパソコンに限らない。タブレットやスマートフォンでもホームページなどを閲覧する際、同じように警告音や警告画面などが出てくるそうで、そうした場合にも電源ボタンを押して電源を落としてしまえば、問題ないということだ。

(石川テレビ)

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