【解説】北陸新幹線全線整備に向け石川県議会で「米原ルート」決議 富山での議論は

上野キャスター

北陸新幹線のルートについて県政担当の神林記者とお伝えします。

北陸新幹線は今年3月に福井県の敦賀駅まで延伸して、次の焦点は大阪までをいかに早くつなぐかですが、ルートについては石川県で議論が再燃していますね。

神林賢範記者

そうなんです。まずは改めて、敦賀より西のルートを確認します。

現状、福井県小浜市を通り京都を経由して新大阪に向かう「小浜・京都ルート」に決まっています。富山から新大阪まで1時間40分でつながるとされ、想定される工期は15年です。

一方、ここにきて推す声が出てきているのが琵琶湖の東側を通り、滋賀県の米原駅に到達する「米原ルート」です。

乗り換えが必要になると言われていますが、建設する距離は小浜ルートの半分以下、工期は10年となっています。

上野キャスター

2016年には与党のプロジェクトチームが「小浜ルート」に決定していて、もう決着済みの話、のはずなんですよね。

神林記者

はい、しかし石川県内では米原ルートを推す声が徐々に強まってきています。

20日、石川県議会は「米原ルート」に考え直すよう国に求める決議案を可決しました。決議文では小浜ルートの建設費は当時2.1兆円との試算だったが資材などの高騰で今や4兆円と言われている、京都府民の理解を得ることは至難の業などとして「米原ルートに考え直すよう強く求める」としています。

上野キャスター

どうして今になってルートの議論が再燃しているのでしょうか。

神林記者

一番の理由は、現状の小浜ルートでは着工時期が見通せないということです。

着工には環境に影響を及ぼさないか調査や評価などを行う「環境アセスメント」という手続きが必要ですが、京都の地元住民への説明会などに時間がかかっている状況で完了のめどが立っていません。

こうして米原ルート案が再浮上する一方、与党の整備委員会は18日、米原ルートの議論を否定し、小浜ルートで延伸することを改めて確認しました。

また、国土交通省は19日ルートに関する資料をWEBで公開し、米原ルートは・東海道新幹線の運行のひっ迫につながることや・北陸新幹線で導入されている運行管理システムや設備と異なるため米原への乗り入れは困難なことなど、米原ルートが断念にいたった経緯を改めて示しました。

石川県内では早く大阪までつながってほしいという思いから、なんとか米原ルートを再び議論に加えようと、自治体などの動きが活発化しています。この1か月ほどの石川県内での動きです。

5月下旬、金沢から西の市長らが出席した会議では。

「今こそ米原ルートの再考を強く要望求めたいと思います、ご承認いただける方は拍手をお願いします」

関西、中京圏の両方に近い米原案の採用を求める緊急決議が全会一致で採択されました。

加賀と小松の市長、それに自民党の重鎮県議は「京都で根強い反対がある。受け入れてもらえないのに議論しても意味はない」などとして米原ルート支持を鮮明にしました。

加賀観光推進議員連盟会長 福村章県議(小松市選出・自民)

「京都の皆さんの理解を7年間たっても誰もとれなかった。このままズルズルといって、30年、40年間違いなくかかるよりは米原が最善の方法」

一方、同じ日には都内で沿線の知事や国会議員が出席した建設促進大会が開催され、登壇者は次々と「小浜・京都ルート」の優位性をアピール。「米原派」をけん制しました。

杉本達治福井県知事

「大阪・関西の発展のためにも小浜・京都ルートは外すことはできない」

三日月大造滋賀県知事

「私も小浜京都大阪への早期着工と早期開業が思いでありますので、そのことを明確に申し上げます」

石川県内で米原ルートを推す声が強まっていることに対し馳知事は…。

馳浩石川県知事

「米原ルートであったらですね、乗り換えなしということは解決はできません。より早く大阪につなげていくという観点で、現行ルート(小浜ルート)を踏まえて対応を期成同盟会の知事の皆さんと一緒に、また経済界の皆さんと一緒に対応していきたい」

上野キャスター

「小浜ルート」か「米原ルート」か。石川県では大変な議論となっていますが富山県内はどうなんでしょうか。

神林記者

新田知事は一貫して現在の小浜ルート支持の立場を崩していません。

新田知事

「私の立場としては、順を追って今の小浜ルートが決まったことでありますから、それに基づいて工事費なども算定されていますし、小浜ルートをどうやって一日も早く実現していくかということに、私は今、引き続き努力をする立場だというふうに考えています」

神林記者

富山県の議会では一部の県議が米原ルートへの再考を主張していますが、最大会派の自民党議員会から米原ルートを上げる動きはみられません。

しかし着工時期が見通せない状況が続くと見直しを求める声は広がっていく可能性はあります。

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