首里石嶺で床上浸水多発 背景に「都市化」も 14日の大雨被害、市が災害見舞金支給へ 沖縄

大雨のたびにあふれる石嶺雨水排水路。住民によると14日午前10時ごろには、てすりの高さまで冠水したという=20日、那覇市首里石嶺4丁目

 大雨警報が発表された14日に、那覇市首里石嶺町3~4丁目で床上浸水が多発していたことが20日までに分かった。

 市には、同町を中心に15件の罹災(りさい)証明願書が提出されており、今後も増えるとみられる。市は被害調査を実施しつつ、罹災証明が認められた市民には災害見舞金2万円を支給するという。

 同地域は海抜100メートル近いが大雨のたびに床下・床上浸水が多発する。住民によると14日午前10時ごろに市管理の石嶺雨水排水路があふれ、道路は1メートル近く冠水した。

 排水路付近に住む男性(66)は自宅が床上約40センチまで浸水し、家具や家電が使えなくなった。「毎年、短時間で浸水するが今回は約40年ぶりの被害だと思う」と語った。約30年前に自宅を建てた男性は「この地域では浸水対策で土台を高くする家が多いと思う」と語った。

 30~40年前から浸水が多発する背景には河川の構造と周辺地域の都市化がある。市によると、排水路は市道鳥堀石嶺線を境に県管理の安謝川に切り替わるが、下流の整備が完了しておらず大雨が続くと流れが滞るという。また、浦添市経塚など隣接地域の道路整備により雨が地面にしみこまず、排水路に流入する地域が拡大したことも背景にある。

 市は2020年から浸水被害軽減策として約20億円の予算を掛け、4丁目の地下に、1時間に56.5ミリ、6千立方メートルの雨水をためる「首里石嶺雨水調整池」の整備を始めている。しかし排水ポンプの設置が今年11月予定だったため、うまく機能しなかったという。それ以前に、調整池の規模は13年の浸水被害を基に設定していたため、1時間に過去最大94.5ミリを観測した14日の大雨は想定外だった。

 複合的な要因で発生する浸水被害に対し、市下水道課などは県の河川整備の迅速化を期待しつつ、人的被害が発生しないよう大雨時の警戒などを継続していくという。 

(嘉陽拓也)

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