鳥栖GK朴一圭の「黄色シャツ」、磐田テクニカルエリアも「混乱」(3)【Jリーグに「改善してほしい」色ルール違反】(3)

審判のユニフォームは、やっぱり黒が一番? 撮影:原壮史(Sony α1使用)

サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回のテーマは「これはルール違反ではないのか?」。ベテラン記者がJリーグ、そして日本サッカー界に一石を投じる――。

■JFAが定めた「ユニフォームの色彩」

日本サッカー協会(JFA)には「ユニホーム規定」というものがあり、全国の登録チームはこれに従わなければならない。その第4条に「ユニホームの色彩」という規定があり、その1として「ユニホームのうちシャツの色彩は、審判員が通常着用する黒色と明確に判別し得るものでなければならない」とされている。日本国内だけのいわば「ローカルルール」だが、一般のチームは黒いシャツをユニフォームにはできないのである。

(ただし、同規定の第10条に「適用除外」という項目があり、Jリーグ、JFL、WEリーグ、なでしこリーグ、Fリーグ(フットサル)はこの限りではないという。横浜FMが黒い「スペシャル・ユニフォーム」を着ることができたのは、この条項のおかげである。

ところが、最近のJリーグの試合では、審判員は黄色や赤、青、緑などのカラーシャツを着用していることが多い。ちなみに6月15日と16日に行われたJ1第18節の全10試合では、レフェリーのシャツは6試合が黄色、3試合が赤、そして1試合が緑だった。だが、もちろん、Jリーグのレフェリーたちには黒いシャツも配布されている。Jリーグでごくたまに黒いシャツのレフェリーを見ると、なぜかホッとするのは、私だけだろうか。

■川崎と対戦した鳥栖GK「シャツの色」

上記J1第18節の10試合では、FC東京の野澤のようにレフェリーと同じ色のシャツでプレーしたGKがもうひとりいた。アビスパ福岡とアウェーで対戦したサガン鳥栖の朴一圭である。レフェリーの黄色よりやや薄い黄色だったが…。

実は、GKのウェアとレフェリーのシャツの色のかぶりは今年始まったことではない。私が気づいたのは昨年のことだったが、川崎フロンターレとアウェーで対戦した鳥栖のGK朴一圭とレフェリーが、まったく見分けのつかないオレンジ色のウェアを着ているのを見て驚愕した。

その後、同じようなケースを何度も見たので、Jリーグにも、Jリーグにレフェリーを派遣しているJFAの審判委員会にも改善を求めた。だが今年になっても、同じような状況が続いているのである。好みの問題ではなく、「ルール違反」状態なのに、どうしたことだろうか。

ある審判関係者によると、GKとバッティングしない色を着るように指導しているのだが、うまく調整できないこともあるのが現実だという。そして、最悪の場合、ビジターチームのGKとレフェリーのシャツの色が重なるのは仕方がないことにしているという。

たしかに難しいときもあるだろう。しかし、その一方で、「レフェリーが黒を着れば済む」というシンプルな解決が可能な場合もあるのではないだろうか。そしてまた、レフェリーと同じ黄色のウェアを着ていた野澤は、ビジターチームではなく、ホームチームの選手だった。

■副審と同じ「黄シャツ黒パンツ」が6~7人も

ところで、6月16日にFC東京と対戦した磐田のチームスタッフは、黄色いシャツに黒いパンツというスタイルであった。ビジターチームのベンチ前を、黄色いシャツ、黒いパンツの五十嵐副審が旗を持って走り、同じ配色の酒井第4審判も近くにいる。

テクニカルエリア内は、通常は黒いスーツ姿の横内昭展監督だけなのだが、選手が倒れると何人ものスタッフがベンチからテクニカルエリアに出てくる。当事者たちはそれぞれに自分の役割や仕事を真剣にこなそうとしているだけなのだが、スタンドから見ていると、磐田のテクニカルエリアはちょっとした「混沌」だった。

なにしろ、黄色いシャツ、黒いパンツの人が6人も7人もいるのだ。副審や第4審判員がどこにいて、どんな仕事をしているのか、主審が視認するのは難しかったのではないか。これは別にルール違反状態ではないし、磐田のベンチは副審の背後にあるので、判定に何らかの影響を与えるものではないのだが、私には、「役者(レフェリー)」と「黒子(チームスタッフ)」の区別がつかない磐田のテクニカルエリアは、とてもではないが「プロの舞台」には見えなかった。

「重箱の隅」をほじるようなこの連載だが、今回ほど「重箱の隅のまた隅」のような記事はなかったかもしれない。次回は、もう少しおおらかな記事にしたい。

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