夏のJリーグ、ドイツEUROでは「難しい」キックオフ直前のサプライスと「経験できない」白夜【サッカー「古今東西ナイトゲーム」の楽しみ方】(1)

「白夜」の太陽を観察したEURO92の、とてもシンプルなADカード。提供/後藤健生

夏が近づくにつれ、Jリーグでもナイトゲームが増えてきた。蹴球放浪家・後藤健生は古今東西、さまざまな場所で夜の試合を楽しんできた。場所が変われば、ナイトゲームの様子も、それぞれ違うのだ。

■LED化で実現「キックオフ直前」の演出

最近、Jリーグなどの試合を見にいくと、キックオフ直前にスタジアムの照明を落とす演出が流行っているようです。照明を消す前には必ず「照明が暗くなるので足元に気をつけるように」というアナウンスもあります。

こうした演出は、スタジアムの照明がLED化したことで可能になりました。

昔は(といっても10年ほど前までは)、スタジアムでは水銀灯などのHID照明が使われていました。演色性が良く(自然光に近い色で見える)、長寿命(長持ちする)など、電球に比べて利点は大きかったのですが、電源を入れてから15分くらいしないと最大の明るさにならないのです。しかも、消灯してしまうと照明を一度、冷ましてからでないと再点灯できないんだそうです。

ですから、演出のために消灯するなどということは不可能です。そもそも、消灯しても一瞬で暗くなりません。

それに対して、LEDは瞬間点灯、瞬間消灯ができるので、あのような演出が可能になったのです。

暑い夏のナイトゲーム。こうした演出は楽しみでもあります。

■試合開始の19時でも「明るい」東京の空

ところが、夏になると日が長くなるので、試合開始の19時頃になっても空はまだ明るいままです。これでは、せっかく照明を消しても演出効果は下がってしまいます。何か、新しい別の演出を考えたほうがいいのではないでしょうか。

一番、日が長くなるのが「夏至」の日です。年によって6月22日のこともありますが(稀に20日の年もあります)、今年は6月21日に夏至を迎えます。

その2024年6月21日の東京の日の入り(日没)の時刻は19時1分だそうです。

「日の入り」というのは太陽の上縁が水平線の下に完全に隠れる瞬間ですから、日没後もしばらく空は明るいまま。しかも、この19時1分というのは天文学的な日の入りであって、実際には地球には濃厚な大気があるので、光が屈折して太陽は天文学的な位置より上に浮き上がって見えますから、19時1分にはまだ太陽は見ているはずです(ただし、山があればそれより早く山陰に沈んでしまいますし、東京だったら太陽はビル群に隠れてしまうでしょう)。

いずれにしても、試合開始の19時には、まだ空は十分に明るいわけです。

■開催中ドイツEUROでは「後半終了まで」

西に行けば、太陽が沈むのは遅くなります。

同じ2024年6月21日の福岡では日没は19時32分。空は後半開始くらいまで明るいはずです。日没時刻は、北に行っても(つまり、緯度が高くなっても)遅くなります。北海道での日没は19時18分。東京より遅くなるのです。札幌ドームでは……あ、ここは太陽は見えませんね。

さらに北に行くと、日没時刻は遅くなっていきます。そして、北緯66度33分より北の「北極圏」に行くと、夏至の日の太陽は一日中沈みません。これが「白夜」と呼ばれる現象です(本来は「はくや」と言うのが正しい読み方なのですが、今では「びゃくや」という読み方が定着してしまいました)。

日本に住んでいる限り、「白夜」を経験することはできません。日本最北端の宗谷岬でも緯度は北緯45度31分だからです。

ところで、6月21日頃というのは、ちょうどサッカーのワールドカップやヨーロッパ選手権(EURO)が開かれている時期です。

今年も、先日ドイツでEUROが開幕したばかりですね。

ドイツの首都であり、決勝戦の舞台でもあるベルリンは北緯52度30分。北海道よりはるかに北にありますから、後半が終了する頃まで明るいのではないでしょうか。

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