『孤独のグルメ』で脚光 神戸の老舗コーヒー店 ふるさと納税で認知度アップ期待も「屋台骨は喫茶店」

萩原珈琲常務取締役の前田輝さん(写真提供:萩原珈琲)

人気漫画『孤独のグルメ』(原作:久住昌之、作画:谷口ジロー 扶桑社刊)で主人公・井之頭五郎がおすすめする、ふるさと納税の返礼品の1つに、神戸の老舗コーヒー豆卸売会社・萩原珈琲(本社:神戸市灘区)のコーヒーギフトが選出。いま、同社のコーヒーが一躍脚光を浴びている。その経緯や思いなどを、萩原珈琲の常務取締役、前田輝(まえだ・あきら)さんに聞いた。

【写真】焙煎士による炭火焙煎の様子

■喫茶店と地元に支えられて

萩原珈琲は、生豆の仕入れから焙煎、出荷までを一貫して手がける。1928年の創業以来、自社工場での炭火焙煎を続けており、コクがあり後味がよく、冷めてもおいしさが保たれる豆には長年のファンが多い。喫茶店への卸販売を中心とし、全国約1100店の取引先を持つ。

「おかげさまで、関西を中心に全国45都道府県の喫茶店で取り扱ってもらっています。また、大阪のヒルトンプラザや三宮のさんちかなどに直営店もあります」

卸販売や直営店の他に近年売り上げを伸ばしているのが、自社のECサイトを通じた個人向け販売だ。コロナ禍前から約2倍に売上金額を伸ばしたという。しかし前田さんは、ある課題意識を持っていた。

「ECサイトでの売り上げを都道府県別に分析すると、1位が兵庫県でした。地元の方々に支えていただきありがたい一方で、まだまだ県外にも伸びしろがあると感じました」

■世界観もぴったり!

「県外でも、萩原珈琲のことをもっと知ってもらいたい」。そう考える前田さんのもとに、萩原珈琲ファンの知人から、今回の孤独のグルメの企画が持ち込まれたという。

「『萩原珈琲の魅力を、より多くの方に知っていただくよい機会では』と紹介されたのがきっかけでした。ふるさと納税企画なので、地元に貢献しながら全国の方々にも訴求できるチャンスだと思い、社内で相 談してコラボを進めることになりました」

自身も『孤独のグルメ』の大ファンだという前田さん。「主人公の井之頭五郎がまちのお店にふらりと立ち寄り、おいしさを味わって一息つく」という作品の世界観が、萩原珈琲の世界観とも合うと日ごろから親近感を覚えていたそうだ。

やりとりを重ね、実食した原作者の久住昌之氏からも「丁寧に焙煎されたコーヒーを豆から挽いて飲むと、気持ちも落ち着いて豊かな気持ちになれますね」と商品に対するコメントを得たという。

今回採用された返礼品は、「ギフトセット100g×6」。オリジナルブレンドをはじめとする、ロングセラー商品の詰め合わせだ。

■信頼を積み重ねていきたい

昨年は森永製菓とのコラボも話題になった萩原珈琲。ビッグネームとのコラボが続くが、営業方針に変化はないと前田さんは話す。

「コラボのお声がけをいただくのはありがたい一方で、私たちの商売の屋台骨は喫茶店です。『新たに取引を』と喫茶店からお申し込みをいただく際には、店舗の立地が既存の取引先と競合しないかを確認し、場合によっては既存の取引先の了解を得てから取引を開始します。それを創業から95年間続けてきました。一杯の珈琲から得られる信頼を、少しずつ積み重ねて今があります」

「コラボを通じて認知度が高まることで、喫茶店に足を運んでもらうきっかけにもなれば」と話す前田さん。自社サイトには、萩原珈琲のコーヒーが飲める喫茶店リストも整備されている。神戸を離れた人も近くの人も、改めてコーヒーでひと息ついてみてはいかがだろう。

取材・文=水野さちえ

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